大阪大学、イスラエル・テルアビブ大学、米ベイラー医科大学の研究グループは、精子の成熟と雄の生殖能力に欠かせないタンパク質を発見した。精巣で作られたばかりの精子は泳げず、卵と融合することもできないため、精巣上体に送られ、そこでおよそ2週間かけて成熟して受精能力を獲得する。これまで精子の形成機構の研究は進んでいたが、精子の成熟機構の解明は進んでいなかった。
大阪大学、イスラエル・テルアビブ大学、米ベイラー医科大学の研究グループは、精子の成熟と雄の生殖能力に欠かせないタンパク質を発見した。精巣で作られたばかりの精子は泳げず、卵と融合することもできないため、精巣上体に送られ、そこでおよそ2週間かけて成熟して受精能力を獲得する。これまで精子の形成機構の研究は進んでいたが、精子の成熟機構の解明は進んでいなかった。 研究グループは今回、NICOLと名付けたタンパク質が、精子の成熟と雄の生殖能力に欠かせないことを突き止めた。研究ではNICOL遺伝子をノックアウトしたマウスを作成し、そのマウスの精巣上体で精子成熟機構が働かず、精子が熟成できず、結果として雄性不妊になることを確認した。 研究グループはこれまでの研究で、生殖路を通る情報伝達の仕組みである「ルミクリン」で働くスイッチ分子NELL2を発見している。今回発見したNICOLでも検証してみたところ、NICOLもまたルミクリンによって精子成熟機構のスイッチ分子として働いていることが分かった。 研究成果は4月24日、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌にオンライン掲載された。不妊に悩むカップルのうちおよそ半数は男性側に原因があると考えられている。NICOLによる精子成熟機構を明らかにしていくことで、不妊症の診断や治療薬の開発につながるだけでなく、男性用避妊薬の開発にもつながると期待できるという。(笹田)