会計ソフトの企業というイメージの先に
代表的製品である「弥生シリーズ」は、クラウド会計ソフト市場において、50%以上の圧倒的シェアを獲得して、7年連続で首位を維持している。また、デスクトップアプリの領域においては、23年連続で売上実績ナンバーワンを獲得。現在、弥生の登録ユーザー数は280万を突破しているという。
だが、弥生が目指してきたのは、会計ソフトメーカーとしてのシェア拡大だけではない。
弥生が長年取り組んできたのが、「事業コンシェルジュ」として、企業を支援することである。
実際、弥生では、「事業コンシェルジュ」の役割を通じて、価値ある新たなサービスを提供する存在になることを、同社のビジョンに掲げてきた。
弥生が打ち出す「事業コンシェルジュ」とは、中小企業、個人事業主、起業家といった事業者が、事業の立ち上げから成長に至る過程で直面する各種課題に対して、その解決を支援するサービスを提供するというものだ。
会計ソフトによる業務支援だけでなく、ソフトメーカーの枠を超えて、事業そのものを支援することになる。
岡本前社長が就任した15年前から、弥生では「一般仕訳相談サービス」や「福利厚生サービス」などを提供。その後も、「記帳代行支援サービス」などの業務支援サービスも提供してきた経緯がある。
2021年度以降は、事業支援サービスを強化。起業時の困りごとをワンストップで支援する「起業・開業ナビ」サービスや、資金調達の悩みごとをワンストップで支援する「資金調達ナビ」サービス、日本最大級の会計事務所パートナーネットワークと連携した「税理士紹介ナビ」サービス、後継者問題の解決を支援する「事業承継ナビ」サービスなどを開始し、「事業コンシェルジュ」としての役割を拡大してきた。
岡本前社長は、「当初は、『事業コンシェルジュを目指す』という言葉を使ってきたが、この2~3年で、ようやく『弥生は事業コンシェルジュである』と言える段階に入ってきた」とし、「企業の立ち上げから、事業承継によってバトンを渡すところまで、サービスを展開できるようになった。今後は、お客様から、弥生が『事業コンシェルジュ』であると認識してもらうための努力が必要である」とする。
一方、前山社長は、「事業コンシェルジュへの取り組みは、受け取ったバトンのなかでも大きなテーマ」と前置きしながら、「事業コンシェルジュの取り組みを、これまで通りに発展させるのではなく、これまでとは異なる形で、どう発展をさせていくのかを議論していきたい。コンシェルジュはお客様からの問い合わせを起点にして、サービスを提供するという考え方が一般的だが、今後は、弥生の方からサービスを積極的に提案する仕組みも用意したい」とする。
そして、「この仕組みを表現するのに、『事業コンシェルジュ』よりも最適な言葉があれば、変えていくことも考えたい」と述べた。
「事業コンシェルジュ」を新たな形に進化させることが、前山社長にとっての大きな挑戦となる。ここにも、前山社長が打ち出す「ワクワク」する要素がありそうだ。

この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ












