ワークスモバイルジャパンは、学校のPTA組織に特化したLINE WORKSの導入支援セミナーを開催した。PTA活動の効率化のため、オンライン化にLINE WORKSを使ってみたいが、どのような効果があるのか。導入時の周囲の反応、またそもそもなぜオンライン化が必要なのかなどといったLINE WORKS初心者の疑問に、ベテランユーザーが答えるセッションである。
今回は、ベテランユーザー代表として、神奈川県川崎市立西丸子小学校PTA会長のウレマン・ステュアート氏、初心者代表として、埼玉県ふじみ野市立葦原中学校PTA副会長(当時)の越川直樹氏が登壇した。越川氏は、2021年度にPTAの広報委員長を務めていた際に、その活動が推薦委員の目にとまり、2022年、副会長に就任した。葦原中学校PTAでは、現在LINE WORKSの導入活動中で、円滑に使っていくにはどうすればよいか、いくつかの疑問を持っての参加となった。
PTA活動をオンライン化する必要性
西丸子小学校のPTAは、LINE WORKSを導入して約2年。ウレマン氏は、近所に住んでいた前会長に推薦されて4年前にPTA会長に就任したという。
西丸子小学校の家庭数は約400、PTAのLINE WORKS利用は、専門委員が5つで約60名、役員が10名で、計70名がアカウントを持って利用している。2年前に使い始めたときは、役員10名のみで使っていたが、2年目から専門委員への利用拡大を進め、3年目に入って、委員全体での利用が実現した。
PTA活動は従来、対面での仕事が非常に多く、週に1~2回学校に集まっていた。1回の会合で2~3時間はかかり、負担が大きい。だが共働き世帯が多く、平日に学校に行くことは難しい。平日の夜や週末に会合を持てばいいという意見もあるが、そうすると先生が時間外勤務や休日出勤になり、コンプライアンス的にも難しいという話を学校サイドとはしていた。
そこで、解決策として、学校に行かなくても情報共有ができる方法としてオンライン化を進めた経緯がある。
先に使っていた「LINEグループ」からLINE WORKSへの切り替えに苦戦
一方、葦原中学校は、家庭数約300、現在、本部役員の7名でLINE WORKSを使い始めたところだ。手始めに前任で勝手のわかる広報委員会から、委員会の活動にも利用を開始している。
越川氏は、PTA内のファイル共有の問題を指摘する。前年に広報委員を務めており、前任の委員からの引き継ぎは、紙の資料とUSBメモリーに入ったファイルのデータだった。データは委員長だけが持っており、委員へのデータの共有方法がなかったので苦労した。いい方法がないかと探していたところ、PTA活動でLINE WORKSを使っているというニュースを目にして、自分たちも導入を決めた。
現在同校では、本部役員以外では広報委員のみでLINE WORKSを使っているが、広報委員に対しても、浸透には苦戦している。これを全ての委員に広げるにはどうすればいいのか悩んでいる、と越川氏は語る。
「広報委員の主な仕事は年に3回の広報誌の発行で、LINE WORKSを委員に導入したのが1学期と2学期の広報誌の間だった。そのため、全ての委員にアカウントを配布して利用を促したにもかかわらず、作業が終わった委員はほとんど利用せず、次の担当も、なぜLINEではだめなのか、など反発があり、なかなか広く使ってもらうことができなかった。その後2学期号以降の活動では活用してもらえましたが」
ウレマン氏も、利用拡大には時間がかかったと語る。「初年度は役員だけで使ってみようということで小規模に始めた。2年目は、全委員に一気に広めたいという野望を持って、委員の引き継ぎ会にチラシ作って『みなさんLINE WORKS入ってください』と乗り込んでいった。ところが、すでに新年度の各委員の間でLINEグループができており、連絡が始まっていた。出遅れた、と思った」
それでも、いくつかの委員会はLINE WORKSを使ってくれた。だがLINEグループで十分という委員会も複数あり、最後まで導入できない委員会もあった。
その反省があったため、3年目の今年は、委員会の引き継ぎ会を待たず、次年度の委員になる予定の人へのアプローチを開始。委員就任決定の通知と同時に、LINE WORKS勧誘のチラシを同梱した。
導入にはある程度強制力が必要
引き継ぎの際の委員への依頼の文章には、連絡手段は基本的にLINE WORKSしか受け付けないことを明記し、スマホを持っていないなど、どうしても使えない場合に限ってメールなどで対応することを書いた。同時に招待用のQRコードと、設定の仕方を詳細に書いたマニュアルも添えて、LINE WORKSへの参加が必須であることをアピールした。その結果、引き継ぎの際にはすでにLINE WORKSのグループが各委員会でできている状態に持っていった。
「ここまでやって、うちのPTAは委員になったらLINE WORKSのグループに入るということを認識してもらうようにした」(ウレマン氏)
PTAにLINE WORKSを導入する際、最初にユーザーの意見を聞くべきか、またはトップダウンで決めていくほうがいいのかなど、進め方について議論があるが、ウレマン氏は「意見調査はいつまで経ってもまとまらない。本部がある程度方針を決めて引っ張っていくほうが決めやすいと思う」と話す。これには越川氏も「意見は尽きないので、リードする必要がある」と同意する。
LINE WORKSとLINEの違いをどう伝えたか
両校のPTAでは以前からLINEを使っていた。その状態から、LINE WORKSを利用するメリットをどう伝えていったのか。
越川氏は「LINEグループのときは、委員内部のコミュニケーションと外部との連絡が同じグループ内で行われており、問題があった。LINE WORKSでは委員と印刷業者などの外部との連絡用には、別のトークグループを設定して、内部のトークルームときちんと分けることができた」
ただ、どうしてもLINE WORKSに移行したくないと考える委員もいて、今は外部の印刷業者に対して、LINEだったりLINE WORKSだったり、委員の担当者によって違うツールで連絡する状況になっている。越川氏は、「現在は広報委員だけで運用している段階だが、それだけでも混乱しているので、他の委員にも広げていけるか不安だ」と言う。
これに対してウレマン氏は、「当校でもLINEでいいのでは、という意見は一部あった。そういう人には、『いったんLINEで友達になると、PTAという一時的なつながりのためにその後もずっと友達登録されているのは問題ないのか』という問いかけをしてみると、確かに好ましくないという反応だった」と現場を説得していった経緯を話す。
また、LINE WORKSなら最大3年間トークに添付したファイルが消えない。過去の履歴をたどれば、当時やり取りしていた資料をいつでも閲覧できるので、再送してもらう必要がない。そうしたメリットを少しずつ伝えていったという。
「LINEでうまくいかないところは改善したいが、全く新しいツールの使い方を覚えるのもいやだというユーザーの心理を突いて、少しずつ理解を深めてもらった」(ウレマン氏)
LINE WORKSで「脱USBメモリー」を実現したい
ウレマン氏はLINE WORKSの導入効果について、送ったメッセージに対して誰が読んだかが実名でわかるため、不慣れな方へフォローがしやすいことに加え、ファイル共有がオンラインでできることを挙げる。「当校のPTAも、もう少しで完全に“脱USBメモリー”ができそうなところまで進んだ。従来は、一部の人のUSBメモリーにしか特定のファイルが入っていないといった問題が起きていたが、そういうことが解消できるLINE WORKSのメリットを感じている」と語る。
西丸子小では、昨年までLINE WORKSのフリープランを利用していたが、今年から容量や人数の上限を増やした非営利団体向け特別プランに移行した。「アカウントを新規に作成する必要があったが、来年度に向けては、トークやファイルの履歴が残ったまま引き継ぎができるので、ここからが本領発揮だと思っている」(ウレマン氏)。
越川氏も、引き継ぎの効率化に期待する。加えて「私自身、LINE WORKSの機能を探っている段階。当校のPTAとしてはアンケート機能なども使っていきたいと考えている。また議事録の作成にノート機能を使ってみたい」と、今後の利用拡大に意欲を示した。
講演の最後に、LINE WORKSをこれから導入したいと考えている人に対し、ウレマン氏は、「最初から全部の機能を使いこなす必要はない。まずはLINEで馴染んでいるトークから始めて、過去の履歴がたどれることや、いつでもファイルが閲覧できるメリットを感じてもらえれば、そこから先の利用が広がるはずだ」と語った。
PTAのように、一定の期間だけ密な連絡が必要な組織にとって、情報共有や引き継ぎの課題は大きい。LINE WORKSの導入の敷居の低さ、合理的な情報共有の仕組みを活用することで、それらの課題が解決できることが示されたオンラインセミナーだった。
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