東海旅客鉄道(JR東海)は3月24日、東海道新幹線に対して2028年を目標に自動運転システムを導入すると発表した。完全自動運転ではなく、乗務員が一部操作する半自動運転だ。車両にはN700Sを使用する。
ATOによる半自動運転を導入
今回発表されたシステムは、列車に運転士が乗務し、列車の起動や緊急停止操作、避難時の誘導を実施するタイプ。
出発時には運転士がボタンを押すだけで列車が走り出し、途中駅を定時で通過、停車駅にも定時かつ定位置に到着可能となるというもの。イレギュラーな状況が発生して急きょ速度を落とした場合も、運転曲線をリアルタイムで再計算し、定時通過と到着をめざすという。
国際電気標準会議(IEC)が定めた鉄道の自動運転に関するレベル分けでは「GoA2(半自動運転)」に相当するシステムだ。
運転士を支援するシステムから、運転士が支援するシステムへ
現在東海道新幹線で使われている自動列車制御装置(ATC-NS)は、自車や先行列車の位置情報などを基に最適な速度を各列車が算出。速度超過時は自動でブレーキを掛けるというシステムだ。
あくまで「運転士の支援装置」という位置づけであり、加速と低速域(時速30km以下)でのブレーキは運転士の手動操作が必要となる。
一方、2028年に導入予定の自動運転システムでは、これまで運転士が対応していた加速や低速域のブレーキ操作も含めて自動化され、ほぼ完全な自動運転となる。ただし、出発時の起動操作や緊急対応要員として引き続き運転士が乗務するため、厳密な意味での完全自動運転とは言えない。
GoA2相当の半自動運転システム自体は珍しい物ではなく、国内でも東京メトロ南北線など30以上の路線で「ATO(自動列車運転装置)」の名称で導入されている。
だが、東海道新幹線のような高速かつ高密度運転を実施する路線への導入は、世界的に見ても珍しい。
JR東海では現在使用している車両(N700S)を改造し、半自動運転に対応する予定だ。
新幹線の自動運転システムを巡っては、JR東日本も2021年に導入に向けたテストを実施している。こちらは新交通システム「ゆりかもめ」などと同様、司令所から遠隔操作するタイプの完全自動運転(GoA4相当)だが、具体的な導入時期は決まっていない。