2023年は関東大震災から100年の節目の年。もしも関東大震災級の大地震が起きた場合、東京はどのような状況に陥るのか。
そのもしもを考えるきっかけとなる防災展示「明日の危機 ~首都直下地震編~」が、2022年11〜12月に東京・豊洲のメブクス豊洲(ミチノテラス豊洲内)で開催された。主催は豊洲スマートシティ推進協議会、事務局は清水建設だ。
展示では「交通防災展示」「交通防災拠点機能確認」「産官学セッション」という3つの取り組みを通じて東京臨海部における交通防災社会実験をした。テーマは被災時に避難先となる拠点同士のつながりとしての「リンク」、受け入れ先拠点の役割としての「ノード」、そしてその全体の運営を司る「マネジメント」だ。
「交通防災展示」は、國學院大學の専任講師・児玉千絵先生がメインで監修。臨海部が高台構造になっていることなどから災害に強いことを「KO-TO防災ステーション構想」として提案。さらに災害が起きてから1日後、3日後、1週間、1ヵ月と経過した場合の状況を「タイムライン」として整理してパネルで展示した。
「交通防災拠点機能確認」では豊洲駅に帰宅困難者を集め、歩いてミチノテラス豊洲まで来て、帰宅困難者を受け入れるという訓練をした。ミチノテラスは帰宅困難者の受け入れ拠点として400平米のスペースと、約200人用の3日分の食料を確保している。そこで実際に帰宅困難者が使うお水や食料などを展示した。
さらに大型サイネージにはLアラートの情報を投映。直接下水道につながる「マンホールトイレ」など施設の機能を紹介し、最後には船と連節バスを使ったバス高速輸送システム「BRT」で広域避難の訓練をした。
12月17日開催の「産官学セッション」では、国交省、東京都、江東区、民間企業らが参加してディスカッションした。
浸水をテーマに昨年3月開催した「明日の危機 ─江東区防災ミュージアム─」に次ぐ、第2弾の社会実験だ。どんな成果が得られたか、清水建設株式会社 スマートシティ推進室 次世代都市モデル開発部 大村珠太郎氏、清水建設株式会社 開発計画部 開発2グループ 宮原夢未氏、清水建設株式会社 開発2グループ 小川瑞貴氏、そして國學院大學の専任講師・児玉千絵先生に話を聞いた。
豊洲は関東大震災のがれきで作られている
── 昨年3月は浸水の話でしたね。新しい避難場所を設計しなおす話に興味を持ったんですが、今回はそこから首都直下地震にテーマが変わったんですか?
大村 そうですね。ただ、地震が起きたときは火災や倒壊だけでなく、水害のリスクもあります。なので、完全にテーマが切れているわけではなく。また、今年が関東大震災から100年ということもあり、首都直下型地震を想定した防災展示と社会実験を行ないました。
── 海抜ゼロメートル地帯もあるから水も無関係ではないし。
宮原 もう1つのきっかけとしては、昨年の4月に東京都が首都直下地震の被害想定をまとめたんですね。その辺りを下敷きに内容を検討しました。
── 「KO-TO防災ステーション構想」はどんなものなんですか?
宮原 まず、江東区・北部は災害時の危険性が高いということをパネルで示しました。東京都が被害想定を出していて、危険度で1〜5までランク付けされた中、大島7丁目などは最も危険なランク5。水害もそうですが、地震のときも基盤の整備の関係で危険でした。その一方、臨海部の豊洲や有明等は最も安全なランク1でした。
これに伴い、江東区・北部と豊洲を結ぶ都道が、人・物流的なところで有効なのではないかということを示しています。最後にもう1つ示したのが、一時滞在施設。帰宅困難者を受け入れるための施設です。豊洲市場や有明など、都が持っている非常に大きな施設が指定されています。
── なるほど。地震が起きたときは豊洲埠頭の方に行けと。普通は逆のことを考えますよね。
宮原 そうなんです。ちなみに、豊洲は関東大震災のがれきで埋め立てられているんです。
── えーっ!!!
宮原 当社も70年前に豊洲埠頭の埋め立てを担当しまして。その後に70年かけてこの街になったというのがすごいですよね。そういう意味でも豊洲を中心に防災について考えたいなというところがあります。
── 大変驚きました。
宮原 話を戻しますと、高速湾岸線が第一次緊急輸送道路、災害時に非常に早く啓開される道なので、物資・交通の輸送には役立つと。そこと豊洲のインターチェンジ、有明のインターチェンジがつながっています。あとは地下鉄8号線が2030年半ばに開通予定です。そうした新しい基盤整備を含めて今後、災害対策ができるんじゃないかと。そうした災害時のポテンシャルの高さをみなさんに分かりやすく周知して、これからどうすべきかをセッションして意見交換するときの題材にしたいということで取りまとめたものがKO-TO防災ステーション構想です。作成にはPLATEAUを活用したり、GIS(地理情報システム)などによる新しい技法を使って分析したところが含まれています。
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