東北大学、トロント大学、トロント小児病院の研究グループは、過酸化脂質の蓄積が細胞死の一種であるフェロトーシスを引き起こす仕組みを解明した。フェロトーシスは、神経変性疾患や虚血性疾患などさまざまな疾患の発症や増悪に関係していることが分かっているが、その仕組みは不明だった。
東北大学、トロント大学、トロント小児病院の研究グループは、過酸化脂質の蓄積が細胞死の一種であるフェロトーシスを引き起こす仕組みを解明した。フェロトーシスは、神経変性疾患や虚血性疾患などさまざまな疾患の発症や増悪に関係していることが分かっているが、その仕組みは不明だった。 研究グループは、フェロトーシス誘導剤を細胞に添加し、脂質過酸化を検出できる蛍光プローブを使用して画像解析を試みた。その結果、特に細胞膜で顕著な脂質過酸化を確認。細胞が膨張して、細胞膜の張力が高まっていることを発見した。この発見から、細胞膜に存在するメカノセンサー分子(圧力などの力学的な刺激を感知する分子)であるPiezo1やTRPチャネルがフェロトーシスに関与しているのではないかと考えた。 そこで、Piezo1の遺伝子欠損細胞やTRPチャネルの阻害剤を使って確認したところ、Piezo1や複数のTRPチャネル分子が脂質過酸化に伴って開口し、ナトリウム・イオンを流入させ、カリウム・イオンを流出させることで、フェロトーシスを促進させていることが分かった。そしてこの時、細胞内外のイオン濃度を維持している分子であるNa+/K+ ATPaseの活性が下がっていた。 以上の発見から、過酸化脂質が蓄積するとNa+/K+ ATPaseの活性が低下し、同時にPiezo1とTRPチャネルが活性化し、ナトリウム・イオンの流入とカリウム・イオンの流出を引き起こすことでフェロトーシスを誘導していることが明らかになった。 研究成果は3月9日、カレント・バイオロジー(Current Biology)誌にオンライン掲載された。今回の発見により、神経変性疾患や虚血性疾患などの病態解明に寄与すると期待できるという。さらに、フェロトーシスは有力な新規がん治療戦略の1つとして注目を集めている。今回の発見の新規がん治療への応用も期待できるとしている。(笹田)