小惑星リュウグウ探査機「はやぶさ2」の可溶性有機物分析チームは、同探査機が持ち帰った試料を主に溶媒で抽出することにより、含まれる可溶性有機分子を分析。炭素(C)と水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、イオウ(S)を含む組成からなる有機分子が約2万種含まれていることを明らかにし、アミノ酸やカルボン酸、アミンのほかに芳香族炭化水素類などを検出した。
小惑星リュウグウ探査機「はやぶさ2」の可溶性有機物分析チームは、同探査機が持ち帰った試料を主に溶媒で抽出することにより、含まれる可溶性有機分子を分析。炭素(C)と水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、イオウ(S)を含む組成からなる有機分子が約2万種含まれていることを明らかにし、アミノ酸やカルボン酸、アミンのほかに芳香族炭化水素類などを検出した。 リュウグウをはじめとするC型小惑星(炭素系の物質を主成分とする小惑星)に豊富に存在する始原的な炭素質コンドライトにはアミノ酸を含む様々な可溶性有機分子が含まれており、生命の誕生につながる前生物的有機分子を初期の地球や他の天体に供給した可能性がある。 研究チームは、はやぶさ2の1回目のタッチダウン・サンプリングで得られたリュウグウ表面試料に含まれる有機分子を日米欧の研究チームで分析。アミノ酸やアミン、カルボン酸、芳香族炭化水素、含窒素環状化合物など種々の有機分子を検出した。地球生命が用いるタンパク性アミノ酸のほかに、非タンパク性アミノ酸が見つかったが、左右構造を持つアミノ酸はほぼ1:1で存在し、非生物な合成プロセスによるものであることが示された。 同チームによると、小惑星表面からはいろいろな過程で物質が宇宙空間に放出されることが観察されており、リュウグウ表面の有機分子が他の天体に運ばれる可能性があるという。また、リュウグウなどの小惑星表面は炭素資源としても利用可能であることを示しているとしている。研究論文は、米国の科学誌サイエンス(Science)に2023年2月24日付けで掲載された。(中條)