理化学研究所の研究チームは、タンパク質の水和構造を高精度で予測する人工知能(AI)の開発に成功した。タンパク質の水和構造とは、タンパク質の表面や内部の水分子の配列様態のことであり、タンパク質の構造安定化、分子認識、機能発現において不可欠な役割を担っていることがわかっている。
理化学研究所の研究チームは、タンパク質の水和構造を高精度で予測する人工知能(AI)の開発に成功した。タンパク質の水和構造とは、タンパク質の表面や内部の水分子の配列様態のことであり、タンパク質の構造安定化、分子認識、機能発現において不可欠な役割を担っていることがわかっている。 研究チームは今回、3次元畳み込みニューラルネットワークを用いて、水分子周辺の原子配置を学習し、その学習結果に基づいて任意のタンパク質の水和構造を予測できるAIを開発した。訓練用データとして0.16~0.18ナノメートル(nm)の分解能で得られた2145個のX線結晶構造解析モデルから531万762個のデータを作成。そのうちの70%を訓練用に、残り30%を学習成果を検証する試験に用いた。 訓練済みAIに対して同チームは、水和水分子を含むタンパク質構造モデルで、AIによる予測結果とX線結晶構造解析で得られた水分子の電子密度を比較。このAIが水和構造をうまく予測できることを検証した。さらに、以前に作成した水和分布予測方法では不可能であった、水に溶けにくいフェニルアラニンなどのアミノ酸で構成されたタンパク質表面の水和構造も予測できることがわかった。 研究チームによると、今回構築したAIは、米国や韓国で開発された同様のAIと比較して、結晶解析で見いだされた水分子位置の再現度などにおいて圧倒的に良好な結果が得られ、タンパク質の動態解明や創薬に貢献することが期待されるという。研究論文は、科学雑誌サイエンティフィック・レポーツ(Scientific Reports)オンライン版に2023年2月7日付けで掲載された。(中條)