小惑星探査機「はやぶさ2」の固体有機物分析チームは、同探査機が地球に持ち帰った小惑星リュウグウ試料の非破壊分析と破壊分析を実施。リュウグウに含まれている有機物の主要な割合を黒色の固体有機物が占めていることを明らかにし、リュウグウ母天体で水、有機物、鉱物との化学反応が起こった証拠を見い出した。
小惑星探査機「はやぶさ2」の固体有機物分析チームは、同探査機が地球に持ち帰った小惑星リュウグウ試料の非破壊分析と破壊分析を実施。リュウグウに含まれている有機物の主要な割合を黒色の固体有機物が占めていることを明らかにし、リュウグウ母天体で水、有機物、鉱物との化学反応が起こった証拠を見い出した。 同チームは、リュウグウ試料(200~900マイクロメートルサイズの微粒子37個)をさまざまな顕微分光法で非破壊分析し、試料中の有機物を構成する化学結合の種類と割合を測定。その結果、同試料は、最も始源的なイブナ型炭素質コンドライト隕石や始原的なミゲイ型炭素質コンドライト隕石のものに似ていることがわかった。 さらに、それらを電子顕微鏡で観察し、ナノメートルサイズの球状有機物や薄く広がった不定形の有機物が、層状ケイ酸塩や炭酸塩に隣接した、あるいは混じり合った状態を見い出した。リュウグウの母天体中で生じた二次鉱物との共存状態は、これらの有機物もまた母天体で液体の水と反応して生じた証拠であるという。 また、試料の同位体組成を測定した結果、数十ケルビン(マイナス200℃以下)の低温環境でのみ生じることがわかっている重水素および/または窒素15が濃集している領域を検出。分析したリュウグウの有機物は確かに地球外起源であると共に、これらの少なくとも一部の有機物は星間分子雲や原始惑星系円盤外側などの極低温環境で形成されたことが明らかとなった。 これらの結果から、C型小惑星(炭素系の物質を主成分とする小惑星)の黒い固体有機物をはじめ、生命を構成する成分とは一見無関係のようにみえる形をした有機物が、初期の地球や惑星に大量にもたらされ、ハビタブルな天体の形成に寄与した可能性が新たに期待できるという。研究論文は、米国の科学誌サイエンス(Science)に2023年2月24日付けで掲載された。(中條)