APAC主要12市場を調査、「パブリッククラウドからの回帰」「エッジ/AI」などの動きも
日本とAPACのCIOが抱く最大の懸念は、レノボ・AMD共同調査
2023年02月24日 07時00分更新
レノボとAMDは2023年2月22日、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)主要12市場のCIOおよびITDM(IT意思決定者)を対象にした「CIO Technology Playbook 2023」の調査結果を発表した。ビジネス成長の鈍化につながる2023~2024年の懸念材料として、APAC全体で最も多く挙がったのは「ハイインフレーション(急激なインフレ)」だった。日本では「人的資本不足」とその解消が焦点となっている。
記者説明会では同調査結果の詳細や分析のほか、「AMD EPYC」プロセッサーを搭載したレノボ製サーバーの優位性の紹介や、課題解決に向けたソリューションの提案などが行われた。
人的資本不足とITによる課題解決への期待
CIO Technology Playbook 2023は、投資の優先度、重要性の高い課題、緊急性の高い支出に対する考察を行い、CIOが抱える課題を浮き彫りにする調査。今回は日本、インド、韓国、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、台湾、タイ、香港、マレーシア、フィリピンの計12市場において、906人のCIOおよびITDMから有効回答を得ている(うち日本は151人)。
同調査によると、2023年から2024年にかけてビジネスの成長が鈍化する懸念材料として、APACで最も多かった回答は「ハイインフレーション」(53%)、続いて「高いエネルギー価格」「原材料費の高騰」(いずれも50%)だった。一方で、日本単独では「人的資本の不足」(55%)という回答が最多で、「原材料価格の高騰」(53%)、「高いエネルギー価格」(46%)と続く。
またCIOにとっての2023~2024年の主要な優先事項については、APAC/日本ともに「収益と利益の成長を加速」が最多の回答だったが、APAC全体では36%だったのに対して日本では49%と約半数が優先事項に挙げている。さらに日本では「従業員の生産性向上」(31%)が3位となっている。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 社長のジョン・ロボトム氏は、APAC全体と日本の回答を比較しながら、次のようにコメントした。
「日本では『人的資本の不足』が大きな課題となっており、少子高齢化の影響がIT分野にも広がっていることを示している。また『生産性向上』を優先事項とする回答が多かったのも、人材不足が影響しているのではないか。これは日本独自の要件として捉えるべき課題ではあるが、言い換えれば、ITによる課題解決への期待が高いとも言える」(ロボトム氏)
日本AMD コマーシャル営業本部 日本担当本部長のライ・マイケル氏も同様に、「デジタルインフラが生み出す収益が、2022年の27%から2027年には43%に拡大する」「ビジネス目標を達成するうえで、デジタルインフラが重要であると考える日本のCIOは79%に達した」といった調査結果を示しながら、ITに対する期待の高さを指摘した。
「社会環境の変化やビジネスの変化に迅速な対応をしたり、ハイブリッドワークなどの新たな働き方を実現したりといった場合に、柔軟なデジタルインフラストラクチャが求められている。それを実現するためのITソリューションが求められている」(マイケル氏)
同調査結果からは「パブリッククラウドからの回帰」という動きも見られるという。「高負荷の処理をパブリッククラウドからプライベートクラウドやデータセンターに戻した」日本企業は40%に及び、APAC全体よりは少ないものの「想定よりも高い数字」(マイケル氏)だったという。その理由としては「データセキュリティへの懸念と対策」「as-a-Serviceモデルを提供できるパートナーの不足」「利用するアプリケーションにバースティング要件がないこと」などが挙がっている。
マイケル氏は「今後、企業の持つデータの半分はオンプレミスに残り、半分はクラウドシフトしていくことになるだろう」と予測し、それに対応したソリューションを提供することの重要性を示した。
また、日本では「今後12カ月以内にエッジコンピューティングを利用する」予定の企業が67%、「今後12カ月以内にAIを利用する」予定の企業が74%に達した。ただし、インドではいずれも97%、ASEAN全体ではエッジが92%、AIが91%と、日本よりも大幅に高い割合だった。「as-a-Serviceを使用したい」企業も、APAC全体では81%に達したのに対して日本は63%にとどまった。
そのほか、DXを加速させ、レガシーITインフラを近代化させるために、2023年に最優先する投資項目として、日本の企業では、「デジタルインフラストラクチャの管理とセキュリティの自動化」が44%を占めて最も多く、次いで、「ランサムウエアやマルウェアの攻撃に対処するためのサイバー回復力」が42%を占めた。
レノボとAMDによるソリューションの提案
レノボのロボトム氏は、今回の調査結果をもとに浮き彫りになった課題に対して、レノボとAMDの連携が解決策を提案できると語る。
「2022年末の発表でAMDのテクノロジーを採用したレノボ製品が倍増し、ラインアップの約半分を占めている。高いパフォーマンスを発揮でき、コスト削減にも貢献できる」(ロボトム氏)
HCI分野では「ThinkAgile VX/HX」シリーズをラインアップ。「ThinkSystem」サーバーではAMD搭載モデルの品揃えを一気に増やし、高速なハイブリッドクラウド、マルチクラウドの実装を実現。さらにHPC分野では「ThinkSystem SD665 V3 Neptune」や「ThinkSystem SR675 V3」を用意している。
日本AMDのマイケル氏は、「ThinkAgileおよびThinkSystemにより、エッジからデータセンターまで幅広いソリューションを提供できる体制が整った。AMD EPYCプロセッサーにより、高いパフォーマンスを実現するだけでなく、セキュリティの課題や消費電力の問題など、CIOが抱える課題を解決することができる。パフォーマンスや環境性能を含めて107の世界記録を達成し、最高のソリューションを提供できている」と紹介した。
またレノボでは、as-a-Serviceとして従量課金型のオンプレミスインフラ導入サービスである「Lenovo TruScale」を提供している。ロボトム氏は「お客様企業にとって、本当にパブリッククラウドが必要なのかという点についてもレノボとAMDが連携して一緒に議論し、その結果をもとに最適なソリューションを提供できる」と述べた。
レノボとAMDの組み合わせによる導入事例として、インド工科大学ジョードプル校のHPCプラットフォームも紹介された。約3000人の学生が利用する既存のHPCシステムからの置き換えに「ThinkSystemサーバー powered by AMD EPYC processors」をはじめ、コンピューティング、ストレージ、ネットワーキング、ソフトウェア、プロフェッショナルサービスを含むエンド・トゥ・エンドソリューションを導入している。従来比100%増の性能向上となる70TFLOPSの高い計算能力でAIや機械学習、グラフィックデザインをはじめとしたハイレベルのワークロードにも対応し、さらにコスト削減効果も出ているという。