北海道大学と東京大学の共同研究チームは、森林火災や化石燃料燃焼の副産物である熱成炭素の分布について太平洋広域における観測を実施。熱成炭素の一つである「溶存黒色炭素」が、深海熱水域からも供給されていることを発見した。
北海道大学と東京大学の共同研究チームは、森林火災や化石燃料燃焼の副産物である熱成炭素の分布について太平洋広域における観測を実施。熱成炭素の一つである「溶存黒色炭素」が、深海熱水域からも供給されていることを発見した。 研究チームは、学術研究船「白鳳丸」により、東太平洋海域において浅海から深海までの海水を採取。採取試料に含まれる溶存黒色炭素を船上で濃縮し、陸上研究室で溶存黒色炭素の濃度や組成を求めた。その結果、高温かつ高圧である深海熱水域で生成された熱成炭素の一つである溶存黒色炭素が、深海に供給されていることを世界で初めて明らかにした。 海洋に存在する難分解(微生物に分解されない)溶存有機物の総量は大気中の二酸化炭素の総量に匹敵する。だが、その起源や生成メカニズムはよく分かっておらず、炭素循環におけるブラックボックスとされている。今回の成果が、海洋の難分解な溶存有機物の動態の実体や、炭素循環における役割の解明に貢献することが期待される。 研究論文は、サイエンス・アドバンセズ(Science Advances)誌に2023年2月11日付けでオンライン掲載された。(中條)