Fujitsu CaaS上でトラスト機能群を提供、3テーマで試行と実践「Fujitsu Web3 Acceleration Platform」
富士通がWeb3プラットフォーム発表、パートナーとの共創を推進へ
2023年02月07日 07時00分更新
富士通は2023年2月6日、デジタル空間における信頼(トラスト)を実現するためのWeb3プラットフォーム「Fujitsu Web3 Acceleration Platform」を発表した。日本国内向けには2023年3月から、グローバルには2023年度以降順次、提供を開始する。
本人の真正性や契約/取引に伴う行為を保証するWeb3の要素技術を用いて、「デジタル空間上で高い信頼性を実現しながらつながることができるプラットフォーム」と位置づける。あわせて富士通が持つコンピューティング技術やアプリケーション機能も提供し、Web3開発を促進するほか、Web3による新たな体験や価値を生み出す経済圏に向けたコミュニティ活動も展開する。
個人/企業が安心してつながる環境を提供、パートナーとのWeb3共創を進める
富士通では、Web3の要素技術として分散型データ流通と、デジタルIDやデータの真正性を証明するデータウォレットの仕組み「IDYX(IDentitY eXchange)」、ブロックチェーンを応用した台帳データベースの仕組みである「CDL(Chain Data Lineage)」を開発してきた。さらに、HPCやデジタルアニーラなどの高度なコンピューティング技術とソフトウェア技術を容易に利用できるサービス群「Fujitsu CaaS(Computing as a Service)」も提供している。
今回はこのCaaS上で、IDYXやCDLなどにより構成されるトラスト機能群「Fujitsu Computing as a Service Data e-TRUST」の一般提供を開始する。
富士通 執行役員 SEVP CTOのヴィヴェック・マハジャン氏は、「Web3の価値を創出するには『分散型社会』をいかにつなげるかが重要になる」と述べたうえで、富士通では上述したIDXやCDL、CaaSをグローバルに提供し、個人や企業が「安心してつながる」環境を構築できることから「富士通がWeb3の要素技術を活用したプラットフォームを提供することにした」と説明する。
さらに、同社のグローバルパートナー共創プログラム「Fujitsu Accelerator Program for CaaS」参加企業でWeb3の新サービスを共創していくパートナー向けに、上述のトラスト機能群などを無償提供し、安心安全なデータ流通/活用を実現するエコシステム構築のための環境としてWeb3 Acceleration Platformを展開する。
なお、CaaS上に富士通の透過型トラスト技術や、ブロックチェーンどうしを安全につなぐセキュリティ技術である「コネクションチェーン」機能を実装したり、共創パートナーのサービスも段階的に機能として提供することも計画しているという。
「信頼が担保されたデータをもとに、高度なシミュレーションや組み合わせ最適化技術を活用して、さまざまな社会課題を解決に導く複数のシナリオを、選択肢を持たせながら提示できるようになる」(マハジャン氏)
こうした取り組みを通じて、富士通では「参加が容易」「権利が明確」「価値が可視化される」といったWeb3の特徴を生かした、新たなビジネスモデル創出と社会課題の解決を目指す。
「富士通は、プラットフォームをビジネスにするつもりはない。どれだけ多くの人が利用し、どれだけ多くのサービスを提供することができるかが重要である。磨いてきた技術によって対価を得るのではなく、技術を社会に実装し、新たな経済圏を形成し、その上で企業活動を行っていく」(マハジャン氏)
なお現在、Fujitsu Accelerator Program for CaaSには17社が参加しているが、今回のWeb3プラットフォーム提供を契機として、これを数十社規模にまで拡大する計画だ。
DAO共創社会、コンテンツの利活用、デジタルトラストの3テーマを掲げる
共創による新たなビジネス創出に向けて、富士通では3つの観点からユースケースの検討やプロトタイプの開発、実証実験などを想定しているという。
ひとつめは「分散型自律組織(DAO)による共創社会の実現」だ。さまざまな目的に応じて、参加者どうしの自律的な合意形成によってプロジェクトを構成し、新たなWebサービスの試行開発と実践を行うという。それぞれの活動の貢献や価値を可視化し、貢献度に応じて活動成果の利益を適切に分配する新たな経済圏を創出できると見込んでいる。
2つめは「デジタルコンテンツの権利管理と利活用」である。画像/映像などのコンテンツ制作者の権利を守るため、デジタル上で本物であること(真正性)を裏付けたうえで、その流通を拡大させるWeb3サービスの試行開発と実践を行う。制作者が正当な対価を得られる仕組みを構築することで、二次創作や再利用によるコンテンツ創出を促し、それらが自由に流通できる新たな経済圏を創出するという。
3つめは「デジタルトラストの実現」だ。より自由で開かれた情報伝達/活用を可能にするため、個人情報の漏洩や不正取引などのリスクを回避しながら、情報の正しさや信頼を確保するWeb3サービスの試行開発と実践に取り組む。これにより、デジタル上での詐称や詐欺をなくし、あらゆる取引やナレッジ共有の真正性を保証することで、個人や企業が信頼をもってつながることのできる新たな社会の創出を目指す。
今回のサービス開始にあわせて、富士通では開発コミュニティの活性化にも着手する。具体的には、DAOコミュニティの構築および実践や、Web3の新たなサービス創出に向けたグローバルでの企画/開発コンテスト開催などを予定している。
これにより、金融やメディア、ヘルスケア、製造など様々な分野においてグローバルで革新的な取り組みを推進するスタートアップやエンジニア、アカデミアと共創することで、エコシステムの構築をさらに強化し、Web3の社会実装を加速していくという。
富士通 理事 SVP Uvance Core Technology本部長の有山俊朗氏は「TopCoderのように、世界中からアイデアを出す人々が集う場を実現したい」と目標を述べた。
「コンピューティングもひとつの『コモンズ』」
富士通では「個人や企業が貢献しあうことで、社会に必要な価値が自律的に生まれる社会(自立分散型社会システム)」を目標に掲げ、その実現のためにWeb3の社会実装を目指す。
有山氏は、こうした社会の実現を目指すうえでは「コモンズ(公共財)」の考え方が大切だと説明する。有限の資源を特定の組織や人が独占的に所有することなく、共有しながら大切にしていく価値観に基づいた営みを行い、そのコンセプトを共有する誰もが自由に利用できる空間の実現が必要となる。
「富士通は、イノベーションによって社会に信頼をもたらすため、みんなで大切にしていくべき『コモンズ』を起点に、Web3に取り組んでいく。お互いが信頼をもってつながり、貢献し合える環境をグローバルに提供する。コンピューティングもひとつの『コモンズ』と捉え、富士通が持っているノウハウやアセットを組み合わせ、Web3を加速する試行や実践に取り組んでいく」