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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第185回

たかがスタンド、されどスタンド ライティングの鍵を握る「ライトスタンド」

2023年01月31日 16時00分更新

文● 前田知洋 編集●ASCII

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スタンド選びに手を抜いてはいけない

 撮影用のライトを買い集めるようになると、避けて通れないのがライトスタンドの選択です。

 ライト本体を購入するときは、光量や色温度、リモコン付きなど、目的に合わせて熱心に選ぶでしょう。しかし、スタンドとなると、ライト選びとは違い「これでいいか」と、テキトーに選択してしまいがちかもしれません。

 プロの写真家なら、三脚やライトスタンドの大切さは熟知しているはず。しかし、筆者のようなサンデー撮影者は、「とりあえず撮影できれば……」「フリマサイト用の撮影に使えれば……」と、スタンド選びには手を抜きがち。そうなると、撮影中にライトが倒れたり、上手く光が作れなかったりと、撮影時にストレスがたまるばかりです。

 その結果、満足のいくライティングにならないだけでなく、スタンドを倒してライトを壊したり、カメラ三脚にぶつかってカメラを壊したりしてしまう可能性もあります。

 そんなわけで、自分好みのライティングを作り、ストレスなく撮影をするためにも、また大切な機材を守るにも大事なライトスタンドについて、今回は紹介していきます。

ライトスタンドの種類

 スタンドの種類はいろいろあり、主にエアクッション式、バッファスプリング式、クッション無し(手動)の3つのタイプがあると言われています。

 クッション部分がある理由は、スタンドの支柱を縮めるときにうっかり手を離してしまい、縮めたショックでライトやハウジング(ライトの先端のカバーやディフーザー)、接続アダプターを壊さないようにするためです。

支柱を縮めるときにライトを痛めない、エアクッション式のライトスタンド

 エアクッション式は、ロッドの中の空気により、縮まるときにロッド同士が衝突するショックを和らげる機構です。スプリング式は、ロッドの先端にバッファー用のバネがあり、衝撃を緩和する方式です。価格は、エアクッション式、バッファスプリング式、クッション無しの順に安くなっていきます。

スプリング式のセンチュリースタンド

 それ以外にも、足の先がキャスターになっているタイプや、センチュリースタンド(C型スタンド)と呼ばれる耐荷重が大きいタイプなどがあります。

キャスター式のスタンド

スタンドの耐荷重はライト+ウエイトで考える

 スタンドを選ぶとき、スタンドの耐荷重に関しては、ライトの重さだけでなくウエイトにも考慮する必要があります。ウエイトとは、ロッドの反対側などに取り付けてバランスを取る重りのこと。

 耐荷重は、ライトのバランスを調整するウエイトの重さや、ライトに取り付けるディフューザー(ライトボックス)の重さ、ライト本体の重量など、その合計を考える必要があります。

バランスを取るため、ロッドにはライト以外にウエイト(青い部分)も取り付ける

 撮影中、頻繁に移動させるライトとスタンド。耐荷重を超えて機器を装着するとスタンドの関節部などが簡単に曲がったり壊れたりすることがあるので注意が必要です。

足の広がるサイズ(設置に必要な面積)にも注意

 どれくらいの高さまでライトを持ち上げられるのかという点も、スタンドのスペックとしては重要。しかし、意外に忘れがちなのが脚部を広げるために必要な広さです。

 場所を取らないように脚部を狭くして使うこともできますが、重心が上にあるライトスタンドでは、そんな使い方をすると転倒しやすくなり危険です。

スタンドの脚部の広さを確保できることも大切

 外で撮影する機会が多い人は、折りたたんだ最小サイズや重量なども重要になります。筆者はスタジオ代わりのリビングで使うことが多いので、どちらかといえば、安定性の良い重いライトスタンドが好みです。

マンフロットのスタンドは、複数のスタンドを連結して持ち運べる機構があり便利(写真は2つのスタンドを連結)

買い足しにオススメ、ライトスタンドの2タイプ

 ライトスタンドにはさまざまな種類がありますが、筆者が買い足しにオススメする2つのスタンドを紹介しましょう。

○大きいけどオールラウンダー、センチュリースタンド

 センチュリースタンドは、どちらかというと大きめで重いスタンドです。折りたたむこともできますが、持ち運び用というよりはスタジオなどで使うことを想定しています。

 斜めに張り出せるアームが取り付けられ、直角にして俯瞰からのライティングも可能です。脚部がしっかりしているので、バランスの悪くなりがちなライトボックスや、以前に記事で紹介したハニカムグリッドも安心して取り付けることができます。

俯瞰でのライティングもできるセンチュリースタンド

○通称「ころがし」。キャスター式の低スタンド

 座った人物や物撮りが美しく撮影できる、下からのライティング。その場合、脚部にキャスターがついた低いタイプのスタンドがオススメ。キャスター式だとライトやスタンドを持ち上げず、簡単に位置調整ができるので便利です。

下からのライティングはキャスター付きの低いスタンドが便利

大切なのはストレスなく撮影できること

 「縁の下の力持ち」であるライトスタンド。筆者のようなサンデー撮影者にとっては、うまく撮影する以上に「楽しく、気分良く撮影すること」が何よりも大切だと思っています。

 秘密を隠すマジックもそうですが、撮される人物や撮影者の気分が、何となく映像ににじみ出てしまうことがあります。そんな写真や映像にならないためにも、気分良く撮影できるライトスタンドを時間をかけて選んでみてはいかがでしょうか。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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