九州大学、京都大学、東北大学などの共同研究チームは、体内の別の場所に転移する細胞(転移細胞)は、血中で硬くなり、細い血管に「挟まって(つまって)」しまうことで、毛細血管から血管の外へと遊出することを初めて発見した。
九州大学、京都大学、東北大学などの共同研究チームは、体内の別の場所に転移する細胞(転移細胞)は、血中で硬くなり、細い血管に「挟まって(つまって)」しまうことで、毛細血管から血管の外へと遊出することを初めて発見した。 がん疾患を最も高い死因に押し上げている要因は、がん細胞が転移をするためだが、血管に侵入して遠隔に移動したがん細胞がどのようにして毛細血管から血管外へと遊出するかは分かっていない。研究チームは、鳥類の生殖細胞は胚の時期、血管の中を移動路として用いる「血行性転移」をするという点で、転移性がん細胞と同じ振る舞いをすることに注目。転移細胞の血管外への遊出を解析するうえでの優れたモデルになると考え、ニワトリ胚の生殖細胞の血管中での動きについて研究観察を進めた。 その結果、(1)多くの生殖細胞が特定の毛細血管領域まで流れてくるとその血管に挟まってしまうこと、(2)生殖細胞は血球細胞よりも4倍も硬く、そのため、血管に挟まって止まること、(3)生殖細胞にこのような硬さを与えている物質が細胞表面を裏打ちする「アクチン」と呼ばれるタンパク質であること、などを解明した。さらに、循環中の硬い生殖細胞はほぼ球形の形をしているが、毛細血管に挟まるとすぐに形を大きく変化させて血管の壁をすり抜けること、つまり、転移細胞は自らの硬さを巧みに調節することで血管外への遊出を達成することも分かった。 研究チームによると、今後は血液内を循環しているがん細胞が「硬い」のかどうかを調べ、もしがん細胞が硬いのであれば、がん転移抑止の新たな方法として細胞の硬さの操作が有効になり得るとしている。今回の研究成果は米国の雑誌アイサインエンス(iScience)に2022年11月28日付けで掲載された。(中條)