経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は12月21日、個人の学習や企業の人材育成・確保の指針となる「デジタルスキル標準(DSS)」を公開した。
デジタルの専門性や素養を持った人材の不足という課題に対し、経済産業省は本年3月末にビジネスパーソンひとりひとりがDXに関するリテラシーを身につけることでDXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになることを目指した「DXリテラシー標準(DSS-L)」を公開。さらに政府のデジタル田園都市国家構想基本方針では、「DXリテラシー標準」に加え、DXを推進する立場の人材向けのスキル標準を策定することが明示された。
これを受けIPAは経済産業省とともに、6月に有識者WGを設置して専門家による検討・議論を重ね、DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルを定義した「DX推進スキル標準(DSS-P)」を今回新たに策定。これら2つを今般、経済産業省が主催する「デジタル時代の人材政策に関する検討会」において、「デジタルスキル標準(DSS)」として取りまとめた。
デジタルスキル標準は、3月末に公開した「DXリテラシー標準」と今回新たに策定した「DX推進スキル標準」の2つで構成。すべてのビジネスパーソンに向けた学びの指針やそれに応じた学習項目例を定義した「DXリテラシー標準」と、専門性を持ってDXの取組みを推進する人材向けの「DX推進スキル標準」をあわせて提供することで、DXに必要となるスキルを総合的に参照できる。
「DX推進スキル標準」は、DXを推進する人材について、5つの人材類型および15のロール(役割)と、それらの人材に必要となる49個のスキル項目で構成される。
DX推進の中心的役割を果たす人材類型を、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティーの5つに定義。5つの人材類型それぞれに対し、業務やスキルをもとに「ロール」を定義し、詳細に区分しています。例えば、ソフトウェアエンジニアは「フロントエンドエンジニア」、「バックエンドエンジニア」、「クラウドエンジニア/SRE」、「フィジカルコンピューティングエンジニア」の4つのロールに分かれ、業務の違いによって詳細に区分することで、企業・組織は自社に必要となる人材を明確に把握できるようになる。
区分した15のロールごとに、DXの推進において担う責任、主な業務、そして必要なスキルとして、「共通スキルリスト」で策定した49項目に対する重要度を4段階で示す。例えば「デザイナー」の「UX/UIデザイナー」ロールでは、「顧客・ユーザー理解」や「価値発見・定義」というスキルで高い実践力と専門性が必要とされる一方、「機械学習・深層学習」や「セキュリティーマネジメント」については位置づけや関連性の理解ができていればよいことが分かる。
経済産業省とIPAは今後、デジタルスキルに関するポータルサイト「マナビDX」上で研修事業者が提供する学習コンテンツと「DX推進スキル標準」を紐づけて可視化していく予定。これにより、利用者は自身が目指すロールに必要な知識やスキルが効果的に学べるコンテンツを選択・学習しやすくなり、より実践的な学びの場を創出することでリスキリングが促進されることを期待しているという。