日本発で最先端の半導体を再び
また、日本が得意なモノづくりと融合して、最先端半導体の量産を実現することを目指す。
Rapidusは、IBMに対して、モノづくり技術をフィードバックするとともに、日本でパイロットラインを構築し、2020年代後半に向けて、ファブを建設し、量産を開始することになる。R&Dに数兆円を投資し、パイロットラインの構築にも数兆円を投資する。
Rapidusの小池社長は、「日本発のモノづくりによる半導体を供給し、世界に貢献できる」と語る。
2022年は国内での半導体生産回帰の大きな流れがあった
今回の提携の背景には、地政学的リスクへの対応という側面も見逃せない。
米IBMのギルシニアバイスプレジデントは、「米国も、日本も、5nm以下の高度な半導体の生産能力はゼロである。これは、大きな課題である。今回の戦略的パートナーシップは、日米政府のコーディネーションによって実現するものであり、この課題を打開するためのひとつの策になる。リカバリーには時間がかかるが、このプロジェクトにより、2020年代の後半には、地政学的リスクのバランスが取れ、半導体のサプライチェーンが耐性のあるものになる」と指摘する。
また、Rapidusの東哲郎会長も、「デジタル社会がボーダレスに垣根を超えて、全世界の隅々まで行き渡る時期に来ており、デジタル社会を健全に正しく導くことによって、人類、社会に大きな豊かさと幸せをもたらすことになる。だが、いまは、大きな不安と不透明さ、脆弱性がある。それは、地政学的なリスクだけでなく、産業構造にも偏りがあるという点だ。間違えれば、一瞬にして、世界が混乱を来すリスクがある。健全な形での国際連携、バランスの取れた国際連携をすることが世界にとっても重要であり、そこに、今回の連携は意義がある。日本が不足している最先端の半導体技術をIBMとの提携によって確保できる。IBMが長年に渡り、日本を信頼してくれていることで実現したものである」と述べる。
日本の半導体産業は、1980年代後半には、世界の半導体市場の50%を超えるシェアを持っていた。しかし、その後競争力を失い、現在では10%弱のシェアにまで落ちている。2000年から2020年にかけて、世界の半導体市場は20兆円から、50兆円へと大きく増加したが、日本では、20年間に渡り、4兆円規模のままで推移し、旺盛な成長を取り込めなかった。
小池社長も、「数年前に、2nmで、新たな世界を作ろうという話があった。この技術の可能性を検証するために、エンジニアが集まり、真剣に議論をした。その結果、IBMの2nmの技術に、日本のモノづくりの力や、速く作るスピードを加えることで、日本が10年、15年遅れているこの分野の技術をキャッチアップできると考えた」と語る。
今回の提携でも明らかなように、IBMは、最先端テクノロジーの側面から、日本を強力に支援しようとしている。
日本IBMの山口明夫社長は、「日本IBMは、2020年に、量子コンピュータを日本に設置し、日本のお客様にいち早く使ってもらえるようにし、研究も一緒に行ってきた。その成果を世界に展開し、変革をリードしたい」と前置きし、「今回の提携は、それに続く第2弾であり、最先端半導体の研究開発、製造において、高い技術を持った日本の企業と連携し、次世代半導体を作り上げ、様々な社会課題を解決するための活動に取り組みたい。日本で次世代半導体を生産することで社会課題を解決し、日本の成長に貢献したい」と語る。
日本の半導体産業の復興のためにも、今回の提携は重要なマイルストーンになる。
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