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光回路を高速制御できる超高感度フォトトランジスタ=東大など

2022年12月15日 08時50分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学とSTマイクロエレクトロニクスの共同研究チームは、シリコン光回路中で動作する超高感度フォトトランジスタ(入射された光電流を増幅できるトランジスタ)を開発した。1兆分の1ワットと極めて微弱な光信号の検出できるため、深層学習や量子計算用光回路の高速制御が可能となる。

東京大学とSTマイクロエレクトロニクスの共同研究チームは、シリコン光回路中で動作する超高感度フォトトランジスタ(入射された光電流を増幅できるトランジスタ)を開発した。1兆分の1ワットと極めて微弱な光信号の検出できるため、深層学習や量子計算用光回路の高速制御が可能となる。 研究チームは、光吸収層となるインジウムガリウム砒素(InGaAs)薄膜をシリコン光導波路上に貼り合わせ、InGaAs薄膜をトランジスタのチャネル、シリコン光導波路(シリコンを矩形状に加工した光の伝送路)自体をゲート電極とした素子構造を新たに提案。シリコン光導波路を伝搬する光信号の一部がInGaAs層に吸収されてトランジスタの閾値電圧がシフトすることで光信号が増幅されるフォトトランジスタ動作を得ることに成功した。 シリコン光導波路をゲートとしたことで、光吸収を抑えつつ、効率的なトランジスタ動作が得られるようになり、光信号が100万倍に増幅される超高感度動作を実現した。従来の導波路型トランジスタと比較して、1000倍以上高い感度であり、1兆分の1ワットと極めて微弱な光信号を検出できる。 今回開発した導波路型フォトトランジスタを用いてシリコン光回路中の光強度をモニターすることで、深層学習や量子計算で用いられるシリコン光回路を高速に制御することが可能となる。次世代の半導体集積回路に求められる光電融合を通じた新しいコンピューティングの実現に寄与することが期待されるという。 研究論文は、英国科学雑誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)オンライン版に2022年12月9日付けで公開された

(中條)

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