インターネットイニシアティブ(IIJ)は、マルチクラウド環境におけるデータ連携サービス「IIJクラウドデータプラットフォーム(CDP)サービス」を発表した。ノーコードでデータ連携フローを開発し、マルチクラウド、オンプレミスのデータを集約できる。
マルチクラウド活用のボトルネックはオンプレミス
「IIJクラウドデータプラットフォーム(CDP)サービス」ではオンプレミスとクラウドで利用するデータを、CDPに集約することで、既存のシステムに影響を与えずに必要なデータを抽出し、クラウドサービスにデータを連携させることができる。AWSやSalesforceなどのクラウドサービス、Oracle Database、Microsoft SQL ServerといったRDBMSをはじめ、90種類以上の連携アダプターを用意。連携のためのデータ連携フローはノーコードで開発することが可能できる。
さらに、標準機能として提供するデータのマスキング(秘匿)機能や、閉域ネットワークの利用により、機密性の高いデータを安全に取り扱うことができるため、セキュアに、低コストに、データ連携システムを開発し、データ活用によるDXを推進することが可能になるという。データ連携を実現するPaaSサービスと位置づけ、簡単、セキュア、低コストが特徴だとする。
IIJ 執行役員 クラウド本部長の染谷直氏は、「DXにおいてクラウドは必須となり、企業はオンプレミスを抱えながら、目的に応じてさまざまなクラウドサービスを活用するマルチクウド利用が一般化している。すべてのシステムをクラウドに移行した企業はほとんどないのが実態であり、多くの企業にはオンプレミスが残っている。それに伴い、連携の複雑さや、機微なデータをパブリッククラウドに連携したくないといった課題が多く発生している。
IIJでも、営業SaaSをパブリッククラウドで運用し、必要な顧客データ、契約データはオンプレミスの基幹システムと連携している。だが、新たなデータ連携のたびに開発を行っており、オンプレミス側の改修によってサービス開始が遅れたり、新たなコストが発生している」と指摘。「マルチクラウド活用のボトルネックはオンプレミスにある。データ統合は、マルチクラウド時代における大きな鍵であり、データハブとしての役割を果たす今回のIIJ CDPサービスによって、これらの課題を解決できる。企業におけるフルクラウドを実現できる」と述べた。
ノーコード開発ツールでデータ連携を容易に
IIJ クラウド本部サービス企画室長の鈴木透氏は、「主要クラウドサービスのAPIや、アプリケーションのデータ連携方式に対応した連携アダプタをあらかじめ用意。ノーコード開発ツールと組み合わせることで、簡単にデータ連携フローを開発できる。また、IIJのネットワークサービスによるプライベート接続によりインターネットを経由せずに機密データのやり取りを行なえ、データを秘匿化するデータマスキング機能によって、セキュリティにも配慮している」とする。
ノーコード開発では、アステリアの「ASTERIA Warp」をコアエンジンに採用。フローデザインは、フローデザイナーを活用し、アイコンを処理順にドラッグ&ドロップするノーコード開発によって行なう。「データ活用を内製化したいという企業にも適している」という。
マスキング機能で機微データを保護する場合にも、フローデザイナーにアイコンを追加するだけで簡単に匿名化が完了する。「文字種や文字の長さを維持したマスキングや、電話番号の下4桁などの部分的なマスキングにも対応できる。漢字やひろがなといった日本語のマスキングも可能であり、個人情報に含まれる氏名や住所も秘匿化できる。データベースが持つ論理的特性やと統計的な特性などを維持したままのマスキングも可能なため、本番データと同様の量とバリエーションのテストデータを簡単に作成できる」と述べた。
また、IIJ CDPサービスは、同社が提供する国産クラウドである「IIJ GIO P2サービス」上で提供。オンプレミス環境とのプライベート接続により、インターネット到達性のないデータベースでも、クラウドとのデータ連携が可能になる。IIJ GIO P2サービスは、ISMAPの登録が完了しているほか、BCR承認やCBPR認証も取得している。
低コストの観点では、初期費用が0円で、月額料金での利用を可能としており、「大手企業であれば、データ連携のために開発予算を確保できるが、中小企業ではそれができないのが実態である。独自の開発では初期費用として約1000万円かかるものを、IIJ DCPサービスでは、月額で利用できるため、中小企業でも導入が可能になる。スモールスタートが可能なサービスである」と述べた。
最小限のデータ連携機能とデータベースとの連携を持つスモールスタートに適した「エントリー」は月額12万円から、外部トリガーやサブフロー処理が利用でき、データ連携機能を網羅的に提供する「スンタダード」が月額29万円から、大規模および大容量の処理を行うことを想定し、エラーが発生した際には処理途中から復帰させるといった機能などを実装した「エンタープライズ」が月額35万円からとなっている。今後3年で、100社への導入を目指す。
ネットワーク、インフラ、オペレーションに続く4つ目のハブがいよいよ完成へ
具体的なユースケースとして、オンプレミスとクラウドをプライベート接続し、オンブレミスの「出島」のような形でクラウドを活用。連携先のクラウドサービスにあわせたデータ形式への加工、インターフェイスに合わせたRESTやFTPのデータ連携により、オンプレミス側のデータ変更を最小限に抑えられる利用ができるという。基幹システムのクラウドへのリプレースにあわせたデータ連携でも活用できる。
また、オンプレミスを含むマルチクラウド環境において、分散しているデータを集約し、分析に最適化したデータにクレンジング。AIなどのそれぞれの用途に応じてデータを展開するといった使い方も提案する。各種顧客データなどを、クラウドで提供されるデータウェアハウスやBIツールで分析したいといったニーズにも対応できるという。
さらに、個人情報のような機微データをマスキングし、クラウドで提供されるマーケティングオートメーションの活用、外部企業へのデータ提供などにも活用。アプリケーション開発におけるテストデータの提供にも活用が可能だとした。
なお、IIJでは、マルチクラウドを支える「4つのハブ」サービスコンセプトを打ち出しており、これまでに、パブリッククラウドとオンプレミス、およびIIJ GIOを結ぶクラウド間接続ネットワークを実現するIIJクラウドエクスチェンジサービスによる「ネットワークのハブ」、重要情報を扱い、マルチクラウドの中核となるインフラサービスのIIJ GIOインフラストラクチャーP2 Gen.2による「インフラのハブ」、マルチクラウド環境の運用効率化を実現する統合運用管理サービスのIIJ MMP(Multi-Cloud Management Platform)による「オペレーションのハブ」を提供してきた。今回のIIJ CDPは、オンプレミスとクラウド、クラウド間同士をつなぐ、セキュアなデータ連携サービスとして「データのハブ」を実現。同社が打ち出した「4つのハブによるサービスコンセプトが完成することになる。
IIJ CDPサービスでは、12月21日からコア機能の提供を開始したあとも、順次機能を追加。2023年春には、データストア機能を提供して、データ連携の基本的なユースケースに対応するほか、2023年後半にはデータ分析機能を強化する。また、セキュリティではエッジ処理機能を追加。アプリケーションからデータを呼び出し、より高度な利用を実現するAPI連携・管理機能も提供する予定だ。