このページの本文へ

Starlinkをバックホール回線に使うau基地局を、熱海近くの初島で見た

2022年12月08日 12時00分更新

文● 中山 智 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Starlinkを用いた基地局で
コストを抑えつつ電波強度を維持

 12月1日、KDDIは静岡県熱海市の初島にて、Starlinkの衛星ブロードバンド回線をバックホール回線とした基地局の運用をスタートした。運用開始当日は、記者向けの説明会及びセレモニーも開催され、KDDIの髙橋 誠代表取締役社長やスペースXのVice President of Starlink Commercial Salesのジョナサン・ホフェラー氏が登壇した。

初島でStarlinkの衛星ブロードバンド回線使った基地局の運用がスタート

セレモニーに登壇したKDDI髙橋 誠代表取締役社長と、スペースX Vice President of Starlink Commercial Salesのジョナサン・ホフェラー氏

 今回新たに設置された基地局は、富士急グループのピカが運営するリゾート施設「PICA初島」で、同施設は2022年7月1日から「PICA初島 RESPECT YOU, au」としてKDDIが提携している施設だ。

 初島にはもともとauの基地局はあるものの、島の地形の関係から、今回Starlinkを使った基地局を建てた海沿いの地域などは、電波が弱いか圏外となっていた。一般的に基地局を建てる場合、光ファイバーや無線を使ったバックホール回線でつなぐが、山間部や初島のような島嶼は工事の難しさなどもあり、コストがかかってしまう。

 そういったデメリットを解消するために導入したのが、今回のStarlinkの低軌道衛星を使ったバックホール回線の基地局。これにより、光ファイバーや無線施設を付設することなく、低コストで基地局を設置できる。今回設立した基地局も、電柱の上にStarlinkの衛星アンテナとモバイル回線用のアンテナを設置し、各種装置は電柱の足下に配置。電源こそ外部から引いているものの、ソーラー発電などを使うことで、独立した運用も可能とのこと。

電柱はStarlinkのロケットをイメージしたカラーリング

てっぺんのパラボラアンテナで衛星と通信をする

 実際にセレモニー中に基地局の運用スタートし、圏外だったスマートフォンが圏内で通信可能になるデモンストレーションも披露。ちなみにモバイル回線は4Gとなっている。

衛星をバックホール回線として使用

「すずめのお宿」のPR動画に実はStarlinkを使った基地局が登場していた

圏外だったスマートフォンが……

スタート後は4Gがバリ4に!

 KDDIはこの初島の基地局を皮切りに、Starlinkを使った基地局を全国で約1200ヵ所に順次設置していくとのこと。設置エリアに関して明言されていないが、初島のような島嶼のほか、観光客の多い登山ルートといった、これまでエリア展開がコスト的に難しかった地域へ導入していくようだ。

「つながらないがなくなるように」をアピールする高橋社長

今後は全国に1200ヵ所以上設置予定

 また今回のように携帯電話基地局として設置するほか、たとえば期間限定の工事現場などで利用するため、法人向けにWi-Fiのアクセスポイントとして運用する「Starlink for Business」も提供するとのこと。

「Starlink for Business」の衛星アンテナ

アンテナから専用のルーターにつなげれば、Wi-Fiアクセスポイントを設置できる

災害時や企業活動にも活用できる

 ちなみにPICA初島では、ドローンをつかった朝食デザートの運搬や、「映える」写真を撮影できる自動フォトサービス「マチカメ(遠隔カメラ)」をKDDIとの協力のもと提供している。こういったサービスもインターネットに接続できてこそ安定して提供できる。しかし、山間部や離島のリゾート施設はエリアも広いため、ネットワーク設備を設置するは技術的にもコスト的にもハードルが高い。そこにこういったStarlinkを使った携帯電話基地局やWi-Fiスポットを設置することで、各種サービスも活用しやすくなるわけだ。

PICA初島で朝食デザートの運搬に使われているドローン

施設内に複数箇所設置されている「マチカメ」

ブランコの前にあるカメラを使って、遠隔操作で撮影できる

撮影した写真はスマートフォンでダウンロードできる

■関連サイト

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン