フロント周りが落ちそうになるも
ガムテープでの修復で事なきを得る
トラブルが起きたのは山本さんがステアリングを握っていた頃。フロントのリップスポイラーが外れかけてバタバタしはじめたではありませんか。ピット内ではチームスタッフと次のドライバーである木立さんがモニターを凝視しています。そして木立さんはヘルメットをかぶりピットレーンへ。
木立選手にドライバーチェンジするタイミングでメカニックたちはエンジンフードを開けてチェック。幸い異常はなかったようで、ガムテープで補修。そのままピットアウト。
ボロボロの顔になってしまったシビック TYPE R。ですが走りに問題はなく、木立さんは周回を重ねていきます。そしてコース上で1台をパス! 石垣選手に最後を託しました。
あとは石垣選手がチェッカーフラッグを受けるのを待つだけ。静かにモニターを見ながら戦況を見守ります。レース中にピットの片付け作業をするチームもある中、Honda R&D Challengeはただただ石垣選手の帰りを待ちます。
そして日も傾きはじめた16時5分過ぎ、西日を浴びながら見事に4位でフィニッシュをはたしました。この日、2台がリタイアしたST-2クラス。走り切ることが何より大切。そして全員が一人ひとりと硬い握手をして、健闘を称え合いました。
「表彰台まで、あと一歩でした。悔しいですね」という木立さん。「でも1台抜きましたよ!」と大変うれしそうに語ります。そして「最終戦の鈴鹿で、新型のTYPE Rで参戦します! 今年はシビック誕生50周年、TYPE R誕生30周年ですからね。しかも、決勝日は最初のTYPE RであるNSX TYPE Rの発売日でもあります。これは燃えますね」と力強く語ってくれました。
最終戦では新型シビック TYPE Rが投入!
ということは「次の岡山国際で、このシビック TYPE Rとお別れなんですよ。やっぱり寂しいですよね。4シーズン戦ってきてくれたマシンですから」と惜別の思いも。「最後もしっかり戦って、表彰台に登りたいですね」と、なにか噛みしめるように語る姿が印象的でした。
自己啓発としてのレース活動をするHondaの開発スタッフ。自腹活動であるにも関わらず、若い人が楽しそうにレースに参加している姿が印象に残りました。そんな姿を見ながら、「未来のHondaのクルマは、絶対楽しいものになる」という確信を得てサーキットを後にしました。その第一弾が、柿沼さんが手掛けた新型シビック TYPE Rなのかもしれません。