最近の中国のテレビは、中国ならではの社会背景下で生き残りをかけ、さまざまな機能を吸収し進化している。そこで中国の最近のスマートテレビを機能面から見ていく。
コロナ禍で中国での消費の熱が冷める一方で
スマートテレビはまだ年間4000万台以上の市場規模がある
まずは、あらためてこれまでの中国テレビ事情について紹介したい。ライフスタイルの変化により、今でこそ中国でもテレビはあってもなくてもいい存在になりつつあるが、まだまだ貧しかった10数年前には、薄型かブラウン管か、大きいか小さいかでその家の経済状況を知ることができるステータスグッズでもあった。
中国の家では、玄関のドアを開くといきなり広い居間があり、そこで友人や親族をもてなすのだが、海賊版VCD・DVDの映画をテレビで見ながら「ああ、うまくやっているな」と察する。携帯電話とともに、テレビは他人の経済指標を知ることができるガジェットであって、そのためにちょっと背伸びをしてでもいい製品を買おうとしたわけだ。
そうしたニーズを背景に、2009年には農村におけるテレビ購入政策「家電下郷」と都市でのテレビ買い替え政策「以旧換新」が登場。「ハイセンス(海信)」や「KONKA(康佳)」、「スカイワース(創維)」などの中国メーカーがこのタイミングで一気に成長した。その後、中国人の所得が増えるなか、シャオミなどの参入で安いセットトップボックスやスマートテレビが登場し、買い替えが進んだ。
ちなみに、ここ2年ほどの中国市場は、コロナ禍で消費が冷めており、スマートフォンやパソコンなどは「別にこのまま使っても問題無い」という「買い控え」の風潮が強まっている。
それでも日本市場と中国市場を比較すると、2021年の薄型テレビの日本での出荷台数は538万7000台、中国は4325万台と巨大な市場だ。中国のAVC社の調査データによると、今年の1~7月までのテレビ販売台数は前年同期比4.3%減の1910万台とちょっとよろしくないが、75型モデルが売れてて成長しているという。75型テレビは3000元台からあり、日本円では10万以内で購入できる。
新作ゲームが認可されない中国では
既存のゲームを大型テレビに対応させて、新しい体験を提供
そんな中国のテレビ文化だが、スマートテレビ普及以前から海賊版DVDがライフスタイルに入り込んでいたことから、動画配信アプリは一番ニーズのある機能であり、放送波でのテレビ番組の視聴以上に使われている
さらにここ1年は、別の機能をアピールするようになってきた。
その1つがゲーム機能だ。ゲーミングテレビと呼ばれるジャンルの製品があり、リフレッシュレートが120Hzかそれ以上のスペックをうたっている。特に積極的なのがハイセンスで、2020年以降、3世代のゲーミングテレビをリリースし、現在は55型、65型、75型、85型で120Hz、144Hz、240Hzのリフレッシュレートが利用できるようになっている。
中国ゲーム最大手のテンセント(騰訊)は、「騰訊START雲遊戯」というスマートテレビ向けを含むSteamのようなゲームプラットフォームを、またネットイース(網易)も「網易雲遊戯」をリリースしている。これによりスマートフォン向けにリリースされている「原神」「アークナイツ」「陰陽師」といった人気ゲームが大画面で遊べる。
中国では長らく政府審査による新作ゲームタイトルのライセンス発行がされておらず、消費者はすでにあるものしか遊ぶことしかできず、飽きる人が出てきた。中国ゲーム企業は海外市場向けにタイトルを出していこうという動きもあったのだが、一方で中国市場では大画面という形で新しい経験を提供し、継続して遊んでもらおうとしているわけだ。
ソニーも中国で、PlayStation 5に最適化したというゲーミングテレビ「X90K」シリーズをリリースした。また、シャオミはマイクロソフトと提携し、同社の「小米電視」「Redmi」ブランドの120Hz対応ディスプレーをXbox推奨モデルとしてアピールしている。ただ、中国で影響力のあるのは中国産ゲームであり、「騰訊START雲遊戯」や「網易雲遊戯」といったゲーミングプラットフォームが牽引している状態ではある。
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