Flywheelの仕組みにより、16年間で115回以上の値下げを実施
一方、佐藤氏はAmazonの基本姿勢として「Flywheel」という考え方を持ち、安定的に回転するビジネスモデルを構築していることを示した。
AWSが示すFlywheelは、低コスト構造でビジネスを開始することで、サービスの低価格化が可能になり、顧客に体験を提供。顧客は満足なサービスを受けることで、顧客の数が増加し、あわせてパートナーが増加すると、サービスそのものの数も増え、それにより、さらに低コストの体質が強化され、顧客に対して低価格でのサービスを提供できるという仕組みだ。
AWSではこの仕組みを具現化しており、2006年に日本でサービスを開始して以降、16年間で115回以上の値下げを実施し、直近1年間だけでも8回の値下げを実施しているという。
さらに、「オンプレミスでは、緻密な要件定義やサーバーなどの調達による高い初期投資、リソースの余剰や不足のリスクがある。それに対して、AWSのクラウドでは、初期投資が不要だあり、わずか数分でITリソースを用意し、ニーズにあわせて拡張したり、停止したりできる。また、弾力性はクラウドの最大の特徴である。オンプレミスでは余剰キャパシティを想定して、必要以上の投資をしたり、予測できないピークに対してはリソース不足によって、サービスが停止し、機会損失につながることもある。クラウドの価値は、必要なときに必要なだけ調達できる点ある。さらに、クラウドのメリットはコストだけではなく、迅速にアイデアを試し、イノベーションを加速することができる点にもある」などとした。
その上で、「AWSでは、AWS Well Architectedを提供し、アーキテクチャのベストプラクティスを使って、学習、測定、構築を行うことが可能になっている。ここでは、6つの柱を用意し、そのなかにコスト最適化、持続可能性が含まれている。AWS Well Architectedによって、コスト最適化を提供し、クラウドを利用してもらえる」と述べた。先に触れたセルフ診断ツールの「AWS Trusted Advisor」で用意されているチェック項目もAWS Well Architectedに準拠したものだという。
オンプレミスからクラウドへの移行の際にコスト最適化を推進
AWSでは、日本独自の仕組みとして、オンプレミスをクラウドに移行することを支援する「ITトランスフォーメーションパッケージ2.0(ITX 2.0)」を2022年3月から提供しており、評価段階では総保有コストを評価する「クラウドエコノミクス」、クラウドの移行には、想定通りのコスト削減を支援するための「コスト最適化支援」を用意しており、これらもクラウド活用によるコスト削減を支援できることを示した。
また、クラウド移行後のコスト最適化支援を行う「Cloud Financial Management(CFM)」、組織横断的なワークショップ支援である「Financial Hackathonワークショップ(FinHack)」、そして、2022年4月から提供を開始したケイパビリティの可視化を支援する「Capability Assessment(CFM-CA)」を通じて、AWS 移行前から移行後も含めた一気通貫の支援で、顧客のイノベーションを加速できることも強調した。
「クラウドを使う前、使い始めた直後、数年後に組織全体で活用している場合にも、必要な支援を適切に提供していくことになる」と述べた。特にCFMでは、「顧客の利用状況を可視化し、最適化し、財務部門、技術部門をまたいだ形でFinOpsを実践し、持続的なコストの最適化が推進できる」と述べた。
CFMは、2020年から日本市場で提供しており、NTTドコモなどが採用。2022年8月までに200社以上の顧客に提供し、顧客数は前年比で71%増になっているという。「CFMを利用した顧客の多くが約15~20%のコスト削減効果を実現している。コスト最適化支援施策で詳細な数値が得られ、数字どおりの効果が得られたという声があがっている。多くの顧客にこのプログラムの存在を知って欲しい」と述べた。
また、AWSでは「AWS Cloud Value Framework」の提供により、コスト(TCO)削減、スタッフの生産性、オペレーションレジリエンス、ビジネスの俊敏性を実現することができ、同社の調査によると、コスト削減ではオンプレミスからクラウドへの移行により、27.4%の削減効果を達成する。また、スタッフの生産性ではAWSに移行したことで、1台のサーバーあたりの管理者コストは57.9%削減したという効果を発揮。障害発生時のダウンタイムは56.7%削減、必要なタイミングで機能やアプリケーションを提供できる時間が37.1%向上したという。
加えて、「持続的なコスト最適化を実現するためには、アーキテクチャのクラウドネイティブ化に留まらず、人材育成、組織体制等をクラウド向けに適合していくことが必要である。とくに日本の企業では人材育成が重要なテーマになっている」とし、「AWSでは、2022年4月に、人材育成のための『AWS Skills Guild』を発表し、組織全体でクラウド活用を推進するための包括的なスキル向上プログラムを提供している。お客様のスキルレベル向上は AWS活用の効率化や、コストの最適化、コストダウンにも影響する」と語った。