なぜRPAはメンテナンスが重要なのか?
本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「なぜRPAはメンテナンスが重要なのか?」を再編集したものです。
RPA(Robotic Process Automation)とは、人がおこなうパソコン操作を自動化してくれるソフトウェアのことです。多くの企業でRPAの活用が進んでおり、成功事例を目にする機会が増えました。しかし、成功した企業(多数のロボが稼働している企業)にRPAの課題を伺うと、多くの方が教育の問題、組織の課題、そして運用の課題を話されます。今回はこの運用の課題の中でも特にRPAのメンテナンスについて、その問題と対処方法をご紹介します。
1.RPAに必要なメンテナンス
RPAに必要なメンテナンスとはどのようなものでしょうか。大きく分けて2つあります。ひとつめはトラブルの対処、もうひとつは変化への対応です。
①トラブルへの対処
多くのRPAはエラーが発生しないということはありえません。なぜならRPAは人が行なう大変な繰り返し処理を行なうことが多いからです。精度99%のロボットを作ったとしても、100回に1回はエラーが発生します。1日200回の処理を5日繰り返すと10回はエラーが発生する計算になります。そして、実際のロボット作成においてここまで精度を上げるためにはそれなりの開発スキルと時間が必要になるため、実際はさらにエラーの発生頻度が上がります。現象としてはRPAが止まってしまった。あるいはおかしなデータが発生したといったもので、発生の都度対処が必要となります。
エラー対処については、RPAの再実行や早期の原因特定と修正が間に合わない場合は、とにかく業務を回すために運用でカバーすることも必要です。この想定をしておらず、RPA管理部門が現場部門から頻繁にクレームを受けるといったケースも実際に発生しています。
それではどのように原因を特定し、対処すれば良いのでしょうか。単純に、エラー発生時点でRPAでの認識が上手くいかなかったという場合であれば原因の特定までは難しくありませんが、そもそも間違ったデータが混ざっていた場合や、選択肢を間違った後続の処理でエラーが発生するといった場合は、処理を遡って原因を特定していく必要があります。また、Windowsそのものやバックグラウンドで動いているプログラム等、RPAと関係の無い処理場所に原因があった場合、後から追いかけるのが非常に困難となります。
②変化への対応
RPAの自動化対象は変化します。プログラムのバージョンアップやWebサイトのリニューアルに合わせてRPAも修正しなければいけません。もちろん運用の変更があれば、RPAも変更する必要があります。以前、150程のロボットを運用されている企業で実績を確認してみたところ、1年間で全体の20%にあたる約30ロボットに修正が入っていました。
2.RPAのメンテナンス効率を上げる方法
それでは、RPAのメンテナンス効率を上げ方法はどのようなものがあるのでしょうか。大別すると次の4つがあります。
①エラーが発生しにくい作りにしておく
当たり前ですが、エラーが発生しなければ対処の必要もありません。
・自動化対象となるオブジェクトの認識精度を上げる。
・発生するエラーを想定し、リカバリーを設定しておく。
・画面や項目の遷移でなるべくスリープ処理を使わずに対処する。
このような工夫を開発時にしておけば、メンテナンスの頻度を下げることができます。そしてすべてに完璧な対処が難しければ(作り込みの工数をなるべくかけたくない)繰り返し処理等エラー発生の確率が高い部分を重点的に対処することをお勧めします。
②エラーが発生した際に原因を特定し易くする仕掛けをしておく
根本原因をつかむだけでなく、すぐにエラーに対処するという意味でお勧めなのが、実行状況の録画です。動画で状況を残すことにより、最初から最後まで何が起きていたのかすぐに把握できます。
③修正しやすい作りにしておく
特に複数名で運用される場合には、“何をエラーとするのか”や“エラー対処の方法”を明確にすることで、メンテナンスの効率が大幅に向上します。また、ロボットはできるだけ部品を共有化すると、しておくと、担当者がいなくなったためて分からないという状況を防止できます。自動化対象に変化があった場合も、メンテナンス工数を最小限に抑えることができます。
④運用での対処も可能な体制にしておく
RPAは何らかの業務を人の代わりに行ないます。エラーで業務が一定時間停止してもよいという業務は少なくありません。RPAが停止することも想定してエラー時の運用を決めておきましょう。突発的にメンテナンスが発生しても、時間の確保とその間の業務遂行が確保されていれば落ち着いて対処できます。
3.Windows 7からWindows 10へ切り替えた際のRPAへの影響の実例
早くからRPAを導入されていたA社では数年前、Windows 7のサポート終了に伴って、Windows 10のPCへ切り替えを行なうことになりました。この時点で稼働しているロボットはおよそ40個が業務にRPAが組み込まれており、RPAの移行も必須となっていました。ある業務システムはWindows 10でもそのまま動作しましたが、全面刷新や一部修正が必要なシステムもありました。このため、RPAへの影響としては、以下の対処が必要でした。
①メッセージのポップアップなどWindows 7とWindows 10の挙動の違いへの対処
②全面刷新したシステムに関連するロボットの作り直し
③一部修正が影響するロボットの修正
幸いすべてのロボットの仕様はきちんと管理されていたため、対処が必要な個所は洗い出すことができ、順次対処を行なって大きなトラブル無く移行できました。しかし、40ロボットはすべて個別に作られていたためひとつひとつ仕様を確認する必要があり、一部修正が必要な個所はそれぞれ修正していく必要もありました。「各ロボットと自動化対象のシステム、機能を紐づけて管理し、共通部分は部品化しておけば対処の工数は大きく下げることができたね」というのが、関係者全員共通の感想でした。
4.まとめ
RPAのメンテナンスについて、その原因や対処方法を詳しく見てきました。一部の業務でRPA化をスタートした企業は、今後他の業務、他の部署へも展開してくことでしょう。その前に、RPAのメンテナンスの工数を削減する事前準備が不可欠です。RPAに必要なメンテナンスで特に大切なのは次の2点です。
・トラブルへの対処
・変化への対応
RPAのシナリオ作成時にメンテナンス性も十分に考慮しておきましょう。面倒な作業や人がやりたくない作業をRPAに置き換えたはずなのに、やりたくもないメンテナンスに忙殺されないようにしていきたいですね。