製品だけでなくサービス、パートナーエコシステムも拡充、アイレットがゲスト登壇
Nutanixの新年度戦略は「選択の自由」「クラウド移行支援」のさらなる強化
2022年09月15日 07時00分更新
ニュータニックス・ジャパン(Nutanix)は2022年9月14日、2022年8月からスタートした同社新年度(2023年度)の事業方針説明会を開催した。今年6月から同社社長を務める金古毅氏は、日本における2023年度事業戦略として4つの注力領域を掲げた。
また同日には、クラウドインテグレーター(CIer)のアイレットが「Nutanix Elevateパートナープログラム」の認定リセラー契約を締結したことを発表。説明会にはアイレットもゲスト登壇し、Nutanixとのパートナーシップに対する期待を語った。
統合プラットフォームで「選択の自由」を実現、ビジネスに俊敏さをもたらす
金古氏が今年度の注力事業領域として掲げたのは、「ビジネスアジリティの向上を実現する新たなワークロードの推進」「ハイブリッドマルチクラウド化を支援するサービスの強化」「多様なクラウドジャーニーを実現するパートナーエコシステムの拡充」「CX(カスタマーエクスペリエンス)向上に向けた体制強化とお客様のSX(サステナビリティトランスフォーメーション)の実現」の4つだ。
「ビジネスアジリティの向上を実現する新たなワークロードの推進」では、ハイブリッドマルチクラウドの統合プラットフォーム「Nutanix Cloud Platform」がもたらす「Freedom of Choice(選択の自由)」を拡大することで、より柔軟にビジネスアジリティを実現可能にしていくと説明する。
Nutanix Cloud Platformは、プライベートクラウドだけでなくパブリッククラウド、サービスプロバイダーによるマネージドサービス上にも展開することができる。またその利用/運用モデルもアプライアンス、ソフトウェア、サブスクリプションサービスとさまざまだ。
さらに、こうした場所/利用/運用モデルの選択肢だけでなく「テクノロジー/サービス」「(ITの)指針/価値観」についても幅広い選択肢を提供できる。金古氏は、Nutanix Cloud Platformは「最も多くの選択肢を備えた、シンプルかつ柔軟なクラウドプラットフォーム」だと位置づける。
「Nutanix Cloud Platformでは、エンタープライズアプリケーション、クラウドネイティブアプリケーション、AI/MLなどあらゆるアプリケーションの稼働を実現している。4年間で約6倍に性能を強化したことで、Nutanix上で稼働するアプリケーションの種類が拡大。これまで得意としてきたVDIやインフラアプリだけでなく、性能を重視するデータベースやDWH、基幹系のERP、SCMのほか、業界固有のアプリケーション、AIやMLにまで用途が拡大している。従来型のアプリケーションも、新たなアプリケーションも同一プラットフォームで稼働でき、エンタープライズに存在するあらゆるアプリケーションとデータをすぐに活用でき、ビジネスアジリティの向上を実現できる」(金古氏)
この1年間で新たに発表した導入事例も、幅広いアプリケーションを対象としたものになっている。関西電力グループでは3万4000ユーザーに及ぶ大規模VDI環境を構築。セブン&アイ・ホールディングスはグループ各社を束ねる統合OAネットワーク基盤として採用。SBテクノロジーではNDB(Nutanix Database Service)を活用して、データベース運用の効率化を実現。三井化学では、センサーデータを活用した次世代工場基盤にNutanixを採用し、国立国会図書館ではオンプレミスとクラウドを使い分けることで効率的な所蔵資料のデジタル化を推進したという。
コスト分析も含めてレガシー環境からのクラウド移行をサポート
2つめの「ハイブリッドマルチクラウド化を支援するサービスの強化」では、レガシー環境からHCI環境への移行を高度に自動化するツール「Nutanix Move」に加えて、NutanixベースのプライベートクラウドをシームレスにAWSへ拡張できる「Nutanix Cloud Clusters(NC2)on AWS」も提供している。
金古氏は、レガシー環境からパブリッククラウドへの直接移行を行う“Direct to Cloud”の動きが加速していることを指摘したうえで、「NC2はクラウド上における高い効率性を提供しており、最大で50%のコスト削減、60%程度の移行期間短縮を実現する。クラウドへの迅速な移行の実現により、新たなビジネスによって得られる収益の期間を最大化できる」とビジネスメリットの高さを説明した。
またニュータニックス・ジャパン内に「クラウドエコノミスト」と呼ぶポジションも新設。これは日本固有の財務や税務、商習慣にも精通した人材で、クラウド移行のコストを分析/明示し、経済合理性を確保しながらクラウド移行を支援、顧客企業の意思決定をサポートするという。今後はクラウドエコノミストによるセミナーの開催や、ヒアリングに基づく顧客固有のレポート作成も行う予定だ。
さらに日本独自の上流コンサルティングサービスとして、NC2 on AWS、NDB、Nutanix Self-Services向けに、それぞれ「早期導入支援パッケージ」を用意。グローバルで展開している「Nutanix Expert Services」の刷新とともに、日本市場独自のサービスとして設計要件定義を行うコンサルティングメニューを用意したという。
なお、2022年度の新たなNutanix認定資格取得者は約600人に達したほか、ミッションクリティカルユーザーに対する24時間365日のサポート要員の拡充にも取り組んでいることも明らかにした。
アイレットが認定リセラー契約を締結、パブリックセクターのクラウド導入支援
3つめの「多様なクラウドジャーニーを実現するパートナーエコシステムの拡充」においては、Nutanix HCIを扱うハードウェアプラットフォームパートナーだけでなく、ビジネスクリティカルアプリケーションを扱うSIパートナー、クラウドネイティブアプリケーションを扱うCIパートナーにもパートナーシップを拡大していることを紹介。新たなパートナーとしては、NTT PCコミュニケーションズ、NTTコミュニケーションズ、東芝デジタルソリューションズなどが参加している。
同日、Nutanix Elevateパートナープログラムの認定リセラーとして契約締結したことを発表したアイレット 執行役員の後藤和貴氏は、アイレットがNutanixの認定リセラーとなる一方で、Nutanixはアイレットの「cloudpackアライアンスパートナープログラム」でISVパートナーとして登録することを説明。「パブリックセクターの顧客を中心に、スムーズなクラウド導入を支援していくことができる」とその狙いを語った。
なおNutanixとアイレットは今年7月、札幌市にNC2 on AWSと「Nutanix Flow Network Security」を導入したことを発表している。「日本の自治体で初めてハイブリッドクラウド環境を構築した事例になる」(後藤氏)。
4つめの「CX向上に向けた体制強化とお客様のSXの実現」については、顧客固有の課題を理解し、ハイブリッドマルチクラウドを提案するために、営業およびサービス部門においてインダストリー単位の体制を強化。加えて、Nutanix Japan User Groupを通じた顧客エンゲージメントの促進も図る。また、顧客企業におけるサステナビリティへの取り組みをテクノロジーの観点から支援するために、クラウドエコノミストを通じた提案活動などを推進する考えを明らかにした。さらに、ハイブリッドワークが可能なオフィスを東京・大手町に新設し、社員の生産性向上につなげる考えも示した。
堅調なビジネス成長、「Newオンプレミス」の盛り上がりにも期待
同説明会では、2022年度(2021年8月~2022年7月)のグローバルの業績にも触れた。昨年度はすべての四半期で、年間計上収益(ARR)、年間契約額(ACV)、採用企業数のいずれもが前年同期比2ケタ成長を達成した。採用企業は約2500社増の2万2600社に達しているという。
金古氏は「日本国内の事業も堅調に推移している」と述べた。IDC Japanによる「国内ハイパーコンバージドソフトウェアベンダー別ソリューション売上額シェア」(2022年1~3月実績)において、Nutanixは54.3%のシェアを獲得している。「今後も年平均成長率5.1%で拡大する市場であり、ワークロードの広がりとともに、ハイブリッドマルチクラウド基盤の選択肢のひとつとして採用されるケースが増えている。今後も、より高い成長が期待できる」(金古氏)。
また、ガートナーが発表している「日本におけるクラウドとITインフラストラクチャ戦略のハイプ・サイクル:2022年」を引用しながら、「Newオンプレミス」という新たなトレンドが生まれつつあることを指摘した。
「Newオンプレミスは、クラウドネイティブの要素を取り入れた新しいオンプレミスであり、多くのアプリを迅速かつ安全に展開し、ビジネスの変化に対応するものになる。IDCによると2026年までに7億5000万のアプリが新規開発されると予測されており、この速度とボリュームに対応し、柔軟で、セキュリティの高いインフラとして、Nutanixへの注目が集まっている」(金古氏)
なお金古氏は、記者の質問に答えるかたちで、ブロードコムによるVMwareの買収について次のようにコメントした。
「VMwareは、NutanixのHCIと競合する部分はあるが、仮想化という観点では長年のパートナーでもある。買収によって不安を感じているユーザーがいるという声も聞いており、そこに対してはNutanix Moveの提案などを通じて支援できるだろう。またレッドハットは、OSおよびKubernetesにおけるパートナーとしての位置づけにある。こうした関係構築によって、ニュータニックスが目指すFreedom of Choiceを実現することができる」(金古氏)