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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第685回

メモリーと演算ユニットをほぼ一体化したUntether AIのrunAI200とBoqueria AIプロセッサーの昨今

2022年09月19日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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runAI200を4つ搭載したPCIeカード
TsunAImi(ツナミ)

 runAI200は、4チップを搭載したPCIeカードの形で、2 POpsの性能を発揮するとされている。

このカードは“ツナミ”と呼ぶそうだ(ややこじつけがましいが)。文字だけ見てると“ツナィミィ”みたいな発音になりそうなのだが。4つのrunAI200チップの下にMicrochip(旧PLX Technology)のPCIeスイッチが見える。外部にメモリーなどが不要なためか、基板が大変にシンプル

 このグラフは純粋にTOPS値を比較したもので実際の性能はまた別だが、実際にResNet-50やBERTの結果では競合製品を大きく上回る性能で、また消費電力あたりの性能で見ても競合の2倍以上の効率としている。

TOPS値を比較したもの。これはカードあたりの性能という比較である

消費電力あたりの性能。この時にはTenstorrentのGrayskullと比較しても2倍の効率、という話であった

 2020年10月の段階ではまだサンプル出荷だったrunAI200だが、2021年第1四半期には量産開始ということで、正確な出荷時期は不明ながらすでに購入可能になっている。

消費電力は明らかにされていないが、補助電源が8ピン×1のところから見て、225W程度と思われる。カードの上にはファン用電源コネクターが2つあり、必要ならファンを取り付けての冷却も可能ながら、基本はファンレスでの冷却を前提にしているとみられる

runAI2000の後継
Boqueria(ボケリア)

 さてここからが今回の話。runAI2000はINT8で500TOPS(カードは4つ搭載で2000TOPS)だったが、これに続くBoqueriaは、FP8で2PFlops、効率30TFlops/Wを実現する製品となった。

Untether AI社の歴史。2016年までのタイムラインは同社と関係ない気もするのだが……

 基本的なアーキテクチャーはrunAI200と変わらないが、メモリーバンク数は27×27の729個に増加され、また外部に1MB×4のキャッシュが追加、さらにLPDDR5メモリーI/Fも搭載された。

Boqueriaの内部構造。RISC-V云々の話は後述する。RISC-Vコアそのものは実は主役ではない。またrunAI200ではRow/Column Interconnectと呼んでいたものがBoqueriaではE/W(East/West)・N/S(North South) NOC(Network On Chip)に改称されたが、これは名前が変わっただけのようだ

 なるべくならメモリーを使いたくないのだろうが、ネットワークの大規模化に対応しようとすると、どうしてもオンチップSRAMだけでは間に合わず、だからといってこれを超えたらPCIeで対応……になると遅くなりすぎるあたり、ある程度妥協したものと考えられる。

 個々のメモリーバンクの中身が下の画像だ。runAI200では独自の32bit RISCプロセッサーを使っていたものを、BoqueriaではRISC-Vプロセッサー×2に置き換える形になった。またSRAMアレイも8Bytes×80で640Bytesと大幅増量になっている。

メモリーバンクの中身。N/S方向は同期させてデータを移動しても差し支えない、ということだろうか? このあたりはrunAI200からのフィードバックに基づいたものだろう

 あと、おもしろいのはrunAI200ではRow/Columnともにインターコネクトはそれぞれ独立で動作するように記述されているのが、BoqueriaではE/Wは8つでそれぞれ7GB/秒の帯域なのに対し、N/Sは全体で1つとされ、その代わり70GB/秒の帯域となっていることで、このあたり少し振る舞いが変わっているようだ。

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