ヘッドホン端子は高出力・高品質
次はあまり見えない改良点だ。ヘッドホン出力が大きく改善された。これは新型MacBook Proのヘッドホン出力の仕組みと同じと考えられる。通常MacBook Proのヘッドホン端子は1.25Vrmsの出力なのが、接続されたヘッドホンが150Ω以上の場合には3Vrmsの出力に切り替わると言うものだ。
これは以前に書いた記事「新MacBook Proのヘッドホン端子は最大3Vの高出力、LINE-OUT端子としても機能」を参照してほしい。
まずは32Ωの「AK T1p」を接続。端正でとても美しいサウンドが楽しめた。音は低音部分の誇張が少なくフラットでニュートラル基調である。空間的な広がりも良く、音の広がりもよく考慮されていると思う。解像力もそれなりに高く性能も悪くない。誇張感が少ないのでコンシューマ向けというよりはプロ向けの音質調整のように感じられる。Audio Midi画面で確認すると内蔵DACは96kHz/24bit対応のようだ。
この品質であれば、ちょっと喫茶店にポータブルヘッドホンを持って行って聴くのも悪くない。完全ワイヤレスイヤホンを使うよりも一層優れたサウンドで音楽を楽しむことができる。
次にハイインピーダンス・ヘッドホンでは代表的な、300Ωのゼンハイザー「HD 800」を3.5mmアダプターを介して接続してみた。スペック通りならばこの状態で3Vrmsの電圧が出ていることになる。
たしかにHD 800を接続しても、ボリューム位置が振り切れることはなく余裕を持って十分な音量が出ている。能率はHD 800もAK T1pも同じ102dBであるから、AK T1pの接続時と同じくらいのボリューム位置だということはこの自動ゲイン切り替え機能が働いているためだろう。ハイインピーダンスヘッドホンの接続時に自動的に出力が高くなったわけだ。
また、サウンドは一層切れ味が良く、特に低音の引き締まり方が良くなった。解像力も高く、高域も透明感が高く子音のキツさも感じられない。ワイドレンジであるとともによくチューニングされた内蔵オーディオ回路だと思う。
スタジオではハイインピーダンス・ヘッドホンが使用されるケースが多いので、Pro向けを称するパソコンでは、必要な機能だ。MacBook Airは一般向けの機種になるが、高い音質を備えたヘッドホン出力が楽しめるのは良い改良だと言える。試しにコルグのLive Extremeを活用したピアニスト菊池洋子さんのハイレゾ・ストリーミング演奏を試聴してみたが、リアルなピアノの音色を十分に楽しむことができた。多少高質感の感じられるピアノの音色がとても心地よい。
Live Extremeでは96kHzの配信がされているのでMac側ではAudio Midi画面で96kHzにサンプリング周波数を合わせることでビットパーフェクトが可能となり、あるがままのリアル感が楽しめる。
なおマルチドライバーイヤホンの「Astell & Kern Pathfinder」でもこのヘッドホン端子を試してみたがなかなか良い音が楽しめた。ただし高感度イヤホンでは少々出力が高めすぎるように感じられたので音量レベルには気をつけた方が良い。やはりヘッドホン向けの出力設定ではある。
M2 MacBook Airはヘッドホン端子からの出力は有線イヤホンやヘッドホンでも楽しみたくなるくらいのレベルはあると思う。ちょっとしたDAPくらいの音質があり、プロ用に使われるためか音はよくチューニングされていると思う。この新しいMacBookの音をニールヤングが聞いてなんと言うか聞いてみたいところだ。

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