まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第77回
〈後編〉アニメの門DUO キャラクター・データバンク陸川和男社長が語る
コロナ禍はキャラクタービジネスをどう変えたのか
2022年08月27日 18時00分更新
キャラマスクこそライセンスビジネスの強さの象徴
まつもと さて、こういった動向をつぶさに見てこられた陸川さんに、「コロナ禍はキャラクタービジネスをどう変えたのか」というまとめ的な図をご用意いただいたので、ご覧いただきたいと思います。
陸川 先ほどまで申し上げたことと重複しているところもあるのですけれども、コロナ禍がキャラクター商品に影響を与えた部分は2つあります。
まず、供給のタイミングが失われたことです。特にキッズ向けで顕著でしたが、アニメ・特撮番組の制作スケジュールが大きく滞ったことで、日本のキャラクタービジネスの特徴である「番組に新しいキャラクターが登場するタイミングで、そのキャラクターの新商品を店頭に並ばせる」といった、きめ細かい販売戦略が難しくなってしまいました。
そして、今や当たり前となったポップアップ・ストア……コラボカフェや展覧会のイベント、それから新作映画の公開など、重要なタッチポイントが中止・延期になったことも、グッズ販売に非常に大きな影響を及ぼしています。
特に2019年までこの分野において非常に大きな影響を与えていたインバウンド消費が一切なくなったことで、大都市圏の小売店は打撃を受けました。
詳細的に見ると、先ほどまつもとさんがおっしゃったような、どちらかというとファンシー系で大きく扱っていたアクセサリーと言われている商材は厳しかったですね。逆に巣ごもり需要に対応した衛生商品やアニメ関連、スマホアプリゲームは堅調に推移している、といったところです。
なおコロナ禍以降、キャラクターが描かれたマスクなど衛生商品が目立ちました。これは、あらゆる業界で展開できるライセンスビジネスの強さを象徴するものだったと思います。
まつもと そうですね、コロナ前はまさか……。
陸川 除菌スプレーにキャラクターものがあったり。これがキャラクターのライセンスビジネスの強いところだなと、あらめて今回、思いましたね。
そして、この図の下段に囲われている箇所、「『鬼滅の刃』にみる配信発キャラクタービジネス」と書いていますが、『鬼滅の刃』は配信で見ることによってキッズファミリー層に広く浸透していった側面がすごく大きいのではないかなと思っていまして。
コロナ前からその傾向はありましたが、これからはタッチポイントが多様になっていることを意識して展開することが大切になっていくのだろうなと。
それから「オリジナルキャラクターのアニメ化が加速」。当然、オリジナルキャラクターがきちんとマーケットのなかで育成されていくためには、その世界観を表現する上でアニメが重要になります。「めざましテレビ」内で『ちいかわ』が放送されていて、もう今は大人気ですけれども、この傾向は今後増えていくのだろうなと。
最後は「リアルとオンラインのハイブリット化が加速」。今日は、ECがすごく伸びていますという話をしていますが、やはりリアルにはリアルの良さがあるわけで、それをどう組み合わせていくのかが今後のポイントになるでしょう。
この連載の記事
-
第108回
ビジネス
『陰実』のDiscordが熱い理由は、公式ではなく「公認」だから!? -
第107回
ビジネス
『陰の実力者になりたくて!』の公認Discordはファンコミュニティー作りの最前線だ -
第106回
ビジネス
ボカロには初音ミク、VTuberにはキズナアイがいた。では生成AIには誰がいる? -
第105回
ビジネス
AI生成アニメに挑戦する名古屋発「AIアニメプロジェクト」とは? -
第104回
ビジネス
日本アニメの輸出産業化には“品質の向上よりも安定”が必要だ -
第103回
ビジネス
『第七王子』のEDクレジットを見ると、なぜ日本アニメの未来がわかるのか -
第102回
ビジネス
70歳以上の伝説級アニメーターが集結! かつての『ドラえもん』チーム中心に木上益治さんの遺作をアニメ化 -
第101回
ビジネス
アニメーター木上益治さんの遺作絵本が35年の時を経てアニメになるまで -
第100回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』で契約トラブルは一切なし! アニメスタジオはリーガルテック導入で契約を武器にする -
第99回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』を手掛けたダンデライオン代表が語る「契約データベース」をアニメスタジオで導入した理由 -
第98回
ビジネス
生成AIはいずれ創造性を獲得する。そのときクリエイターに価値はある? - この連載の一覧へ