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次のIoTの姿が見える!SORACOM Discovery 2022レポート

SORACOM Discovery 2022で披露されたメーカー発新規事業の舞台裏

アシックスとオムロンが語る新規事業の進め方 鍵はスモールスタートとフィードバック

柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 7月6日~7日にソラコムの年次イベント「SORACOM Discovery 2022」が開催された。今回はその中から、6日に行なわれた事例セッション「テクノロジーは使うもの 事例から紐解く新規事業開発のヒント」のレポートを紹介する。

 日々、新しい技術やサービスが登場し、アイディアを実装するハードルは低くなっている。そんな現在において、新規プロジェクトを成功させるためのポイントは何だろうか? アシックス 事業推進統括部チューングリッド営業部 マネジャー 坂本賢志氏とオムロンソーシアルソリューションズ ソーシャルデザインセンタ 生活オートメーショングループ 澤村一輝氏が新規事業推進における成功のヒントを語った。

ソラコム アライアンスマネージャー 二神敬輔氏がモデレーターを務めた

誰でも使えるガジェットにしたら、デバイスの新しい使い方が見えてきた

 まずはアシックス 坂本氏から「Lite DX solution“TUNEGRID”の紹介」と題するプレゼンが行なわれた。坂本氏は自動車業界で働いていたが、2006年にスポーツ業界のアシックスに転職した。競技用シューズの研究開発をやっていたところ、トップからスポーツウェアラブルを事業化したいと話が来たという。

 「TUNEGRID(チューングリッド)」は元々、スポーツの競技データを収集するシステムとして開発がスタートした。2013年頃からスポーツの現場でデジタル化がブームになり、アシックスもソニーと協業して、ヘッドホン型のウェアラブルデバイスを発売した。そのような商品が欲しいという声があったから作ったのに、実際に発売するとびっくりするぐらい売れなかったそう。

アシックス 事業推進統括部チューングリッド営業部 マネジャー 坂本賢志氏

「一体何でだろうと考えてみると、デジタル化はユーザーにとって何のメリットもありませんでした。あと、ビッグデータのビジネスと言ったところで喜ぶのはスポーツメーカーで、ユーザーにプラスなのかが、今1つわかりませんでした」(坂本氏)

 ユーザーの声を聞いてみると、やはりスポーツ中にデータを取りたいという声はとても多かった。しかし、そのために高性能だが高価なガジェットを買うことも現実的でなかった。そこで、とにかく安価で小さく軽量で、誰でも使えるようなものにする、とTUNEGRIDの方向性を転換したのだ。

「経営陣からはいろいろと言われました。技術のアシックスと謳ってきたのに、真逆なことをやってるじゃないか、と会社の中で逆風が吹き荒れていました」(坂本氏)

安価で軽量で誰でも使えるデバイスを目指そうとしたら逆風が吹いた

 坂本氏はTUNEGRIDをお手軽DXと位置付けて、逆風でいいからその中を突っ切ろうと走りだした。とにかく簡便なモノにするというコンセプトを貫き、まずはバスケットのトップリーグに使ってもらった。続けて、小中学生向けのバスケットスクールにも使われるようになった。

 ある日、ログを見ると、スクールは18時から始まるのに、受信機のデータを見ると16時には体育館に来ている子供達がいることがわかった。親がパートに出るタイミングで、一緒に家を出されて、18時まで待機していたのだ。このことがきっかけでTUNEGRIDは見守りにも使えるのではないか、と気がついた。そこから、さまざまな派生ビジネスが広がったという。

 たとえば、部活のコーチング、障がい者スポーツの支援、育成に必要な運動をしているかの確認とその見守り、高齢者の見守りなどだ。さらには、作業員や工場機材の稼働状況も確認できる。たとえば、機材にTUNEGRIDを付けておけば、稼働率を見られるので、最適な使われ方をしているかどうかがわかるようになった。

 子供たちのIT教育にも活用されている。高校生が自分たちの後輩が行なったハンドボールの結果を見て分析するという、スポーツデータアナリストのような体験をしているケースもあるという。

シューズのデジタル化がさまざまなビジネスの変化をもたらした

「TUNEGRIDを牛に付けると健康状態がわかります。乳牛は発情して妊娠させないとお乳が出ません。発情すると運動量が突然倍になり、それを事前にキャッチするという需要が世界的にありますので、そういった分野にもトライアルしています」(坂本氏)

 さまざまな施設がさまざまな目的でTUNEGRIDを導入していけば、いつの間にか街全体がDXできているという形になるという。TUNEGRIDには、DXしなきゃと構えなくても、ライトな形で地域のDXを実現できるポテンシャルがある、と坂本氏は締めた。

乳牛の発情を検知するセンサーとしても「TUNEGRID」が使えるという

 プレゼン後、「お客様の声という話がありましたが、ヒアリングをしているのですか?」という二神氏の質問があったが、坂本氏はほとんどヒアリングはしていないという。その代わり、TUNEGRIDを導入した、もしくは導入しようとする現場で思わぬニーズを得られているそう。

「たとえば、老人ホームに導入しに行った時には、24時間2交代制で働いているスタッフの体調の方が心配だという話になって、そちらに付けたこともあります」(坂本氏)

 その他、ランニングのフォームが計測できる、といった専用システムだと活用はそれ以上拡がらないが、TUNEGRIDは歩数と場所の情報しか取れないので、その分ユーザー側からいろいろな活用アイディアが出てくるとのことだった。

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