信州大学などの研究チームは、「クェーサー(遠方宇宙に存在する明るい銀河の中心核)」の内部構造が、周囲の広大な領域に分布するガスに対し、非等方的な影響を与える可能性があることを世界で初めて突き止めた。
信州大学などの研究チームは、「クェーサー(遠方宇宙に存在する明るい銀河の中心核)」の内部構造が、周囲の広大な領域に分布するガスに対し、非等方的な影響を与える可能性があることを世界で初めて突き止めた。 クェーサーは強力な紫外線を放射するため、銀河周辺に存在する水素ガス(銀河間ガス)を電離する。このとき紫外線放射が等方的であれば、銀河周辺ガスの「電離され具合(電離レベル)」は方向によらずに一定になるはずだが、先行研究では、電離レベルが偏っていることが報告されていた。 研究チームは今回、紫外線放射の方向がある程度推測できる「BALクェーサー」と呼ばれる特殊な天体を、既存のクェーサーカタログから12個選出。既存のデータに加え、ハワイの「すばる望遠鏡」で新規に観測した結果、クェーサー内部に存在するとされる「ダストトーラス(ドーナツ状の遮蔽構造)」が、電離レベルの非等方性を引き起こしている可能性が高いことを突き止めた。 ダストトーラスは、クェーサーの標準的なモデルに不可欠な構造である。今回の結果は、ダストトーラスの存在を観測的に支持するとともに、その影響が遠く離れた銀河間ガスにまで及ぶ可能性があることを示唆しており、宇宙全体の電離の歴史や、クェーサーの内部構造を探るうえで重要な結果だとしている。 本研究の成果は、米天文学会の学術誌、アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)に掲載された。(中條)