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中性子ビームで燃料電池セル内部の水の可視化に成功=KEKなど

2022年07月14日 07時57分更新

文● MIT Technology Review Japan

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高エネルギー加速器研究機構(KEK)や日本原子力研究開発機構などの共同研究チームは、燃料電池自動車に搭載される実機サイズの燃料電池セル内部の水の生成・排出に関する挙動を、パルス中性子ビームを用いて、ほぼリアルタイムで可視化することに成功した。

高エネルギー加速器研究機構(KEK)や日本原子力研究開発機構などの共同研究チームは、燃料電池自動車に搭載される実機サイズの燃料電池セル内部の水の生成・排出に関する挙動を、パルス中性子ビームを用いて、ほぼリアルタイムで可視化することに成功した。 研究チームは、大強度陽子加速器施設(J-PARC)の中性子イメージング装置の高い性能に着目。微弱な光を検知・倍増する光イメージ増幅器とCMOSカメラを用いた撮像機器の高感度化および撮像条件の最適化を図ることで、パルス中性子を利用して、研究用原子炉にある実験装置と匹敵する可視化性能を実現した。 その結果、実機サイズの燃料電池セル内部の水の挙動を、高い空間分解能(約300マイクロメートル。マイクロは10のマイナス6乗)を維持しながら、従来の10分の1以下となる撮像時間(1秒)で可視化できた。さらに、今回構築した実験装置を用いて、トヨタ自動車の燃料電池自動車「MIRAI(第2世代)」の実機セルを解析し、同セルに特徴的な絞り流路構造に由来する水の生成・排出挙動を確認した。 燃料電池は、発電時に生成された水が燃料電池セル内部に滞留すると、水素や酸素の供給経路をふさぎ、発電性能の低下につながる。そのため、セル外に水を効率的に排出できるセパレーターの流路や電極構造の開発が課題となっている。今回の成果を活用することで、燃料電池の性能を左右する生成水の挙動を速やかに把握し、製品開発にすぐに反映できるようになるため、最適な燃料電池セルや流路構造の開発を加速し、燃料電池のさらなる高性能化・低コスト化が期待できるという。

(中條)

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