来場者の意見を聴いて製品開発
また、Acoustuneからのれん分けした比較的新しいブランドである「MADOO」(マドゥー)は、第2弾モデルの「Typ500」を開発中。試作機を3種類用意していた。これらはドライバー構成はもちろん、その種類や振動板素材も異なるものになっており、会場で音を聞いてもらいながら感想を集め、その声を参考に製品化していきたいということだ。A、B、Cの3種類のうちAはパンチ力と深みがある印象を受けた。Cはパンチ力が抑えられている半面、広がりがある。Bはその中間という感じがした。メーカーの意見としては、印象の違いは素材の差によるものではないかという。筆者の感想としては、AとCは一長一短あるがどちらも良い。しかし、実際の製品ではBのように調整されていくのかもしれない。
このように製品開発の過程に加わったような体験ができるのもポタ研ならではだ。なお、Typ500の価格は8万円から10万円程度を想定しているようだ。
準バランス駆動に対応したINVAのヘッドホンアンプ
もう一つ面白いと思ったのは、INVAというブランドのヘッドホンアンプだ。これはスタジオ用で海外価格が6000ドル(約82万1760円)という本格的な製品で、XLR 4pinと4.4mmの出力を装備。ヘッドホンのバランス駆動が可能である。しかし私が興味深く思ったのは6.3mm標準端子で接続した際に「準バランス」というモードが利用になる点だ(オプション対応)。
6.3mmプラグは3極で、先端部で左チャンネル、その次に右チャンネル(+)、根本がGND(-)の信号をやり取りする。準バランスモードでは、このGNDにモノラルの逆相信号を流すというアイディア。これにかすかに覚えがあったので、さらに聞いてみると、ジョン・マイヤーの特許を参考にしたということだ。ジョン・マイヤーはポータブルオーディオの創成期にポータブルヘッドホンアンプを開発し、国内でも人気があったドイツのメーカーだ。「アクティブ・バランスド・グランド」という同様の技術があり、「CORDA Quick Step」などに用いられていた。こんなことを懐かしく思い出したのだが、もはや15年近くも前の話になってしまった。
改めて考えてみると平面磁界型ヘッドホンも最新技術などではなく、数十年も前に一度流行ってから廃れてしまった技術である。時間が経ち、市場環境が変化する中で、また必要になる技術も少なくないのだろう。空間オーディオが隆盛を迎えようとする今、アクティブ・バランスド・グランドが再び見直されても良いのかもしれない。
ポタ研では、ほかにもたくさんの製品が出展されていた。今回のポタ研では色々と考えさせられたり、直接開発者と話をすることで気付かされたりすることが多かった。こうした良さはリアルイベントならではだ。今後も開催を続けてほしいと願っている。
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