お腹が痛い。急いでトイレに行ったとき、個室が埋まっていたときの絶望感たるや。待ち時間はさながら永遠だ。世界からそんな悲劇をなくそうとしているのがバカンの「AirKnock」だ。
トイレ個室内に設置したタブレットが、「トイレがどれくらい混んでいるか」を利用者に伝えることで、やんわり退室を促す。首都圏のオフィスビルを中心に、一部のファミリーマート、ドーム球場・ベルーナドームなどにも導入が進み、6月末時点で設置台数はおよそ5000台になる見込みだ。
清水建設の手がけた未来志向型のオフィスビル、メブクス豊洲もバカンのシステムを導入済み。たてものOS「DX-Core」と連携し、施設利用者はタブレットから空き状況が確認できる。
なぜバカンは「空き状況」に着目したのか。トイレにはどんな未来が待っているのか。そしてバカンが思い描く、待ち時間のない未来とは。メブクス豊洲の取材を続けてきたアスキー総合研究所の遠藤諭が、バカンの河野剛進(かわのたかのぶ)代表取締役に話を聞いた。
気遣いができるようにするシステム
── 李家正文(りのいえまさふみ)さんってご存知ですか?
いえ、存じませんが。
── 朝日新聞の元出版局長で、トイレに関する本を30冊ぐらい書いているんです。それらのなかでここまでの進化は書かれているんですけど、これからのDX時代にトイレがこれからどうなるかが見えてこない。そんなときにバカンさんのことを知って「これだ!」ということになったわけです。ということで、あらためてAirKnockについて教えていただけますか?
AirKnockは個室内に設置したタブレットを使って、トイレの長時間滞在を抑制するものです。トイレットペーパーなどの近くにセンサーと連携したタブレットが設置されていて、周辺の個室の混雑状況や利用状況、「周りが混んでるよ」ということを教えてあげるという形ですね。
── 個室の混雑状況というのはどうやってわかるんですか?
ドアの上部についた、空き状況を検知するセンサーを使っています。
── でも、すでにトイレに入っている人にとっては他のトイレが空いていようといまいと関係ないんじゃないですか?
そこがまさにポイントです。なぜトイレに長時間滞在してしまうかというと、それは個室空間だからだと思っているんですね。
── 自分が入っちゃえばそれでいいと思っちゃうから。
周りに対して気遣いができなくなってしまう。なので、周りの状態っていうのをちょっと見せてあげるわけです。
── 混んでくると「ピーピー」とか鳴ったりするんですか?
音は出さずに、「もう残り1個室しかないよ」とか、「全部埋まってるよ」といったメッセージを出します。
── 「外で何人待ってますよ」とかも?
技術的にはやろうとすればできるんですが、今はそこまでしなくても十分だろうと。ただ、駅のトイレなんかではトイレの外に設置したカメラで画像認識をして、混雑状況を見ていたりしますね。
── トイレの混雑回避と言うと、たとえばデパートの中のトイレのどこが空いているかがスマホでわかるシステムを想像しがちですが、そういうものではないんですか。
それも標準的なセットとして入っているんですよ。トイレに行く前に空き状況がわかるのが基本サービスとしてあり、そのうえで周りの個室の状況がわかるようになっているんです。
── 「何室中何室埋まってます」みたいなこともできそうですね。
すでにやっているところもありますね。
── 新幹線のトイレで「今入ってます」とか出てくるアレの高度版。
まさにそうです。たとえば大丸東京店さんとかだと、公式サイトやLINEからトイレの空き状況を見ることができたりしますね。
── おお〜。今日はこれからJR東日本さんのStation Workっていう作業ブースを予約してあるんですけど、ああいう感じですね。
そのリアルタイム版ですね。予約は何時から何時の間ですが、ぼくらはそれをリアルタイムで見られるというのが違いです。
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