京都大学の研究チームは、バイオディーゼル生産時の副産物である「廃グリセロール」と大気中の窒素を栄養源とする窒素固定細菌を利用して、生分解性プラスチック素材の生産に成功した。廃グリセロールは強いアルカリ性(pH 9.3)で不純物を多く含むため、利用するには脱脂や中和などの前処理が必要だが、研究では水道水で希釈するだけで再利用を実現した。
京都大学の研究チームは、バイオディーゼル生産時の副産物である「廃グリセロール」と大気中の窒素を栄養源とする窒素固定細菌を利用して、生分解性プラスチック素材の生産に成功した。廃グリセロールは強いアルカリ性(pH 9.3)で不純物を多く含むため、利用するには脱脂や中和などの前処理が必要だが、研究では水道水で希釈するだけで再利用を実現した。 研究チームは今回、窒素固定細菌「アゾトバクター・ビネランジイ(Azotobacter vinelandii)」を利用した。この細菌は大気中の窒素を固定し、バイオポリマーであるアルギン酸とポリヒドロキシ酪酸を生産することが知られている。ポリヒドロキシ酪酸は生分解性プラスチックの素材でもある。 研究チームはまず、水道水で希釈した廃グリセロールの中でこの細菌が生育できることを確認。窒素固定細菌によるバイオポリマー生産では、アルギン酸とポリヒドロキシ酪酸の生産が競合するという性質を活かし、アルギン酸合成欠損株を利用してアルギン酸の合成を遮断した。その結果、野生の菌株に比べてポリヒドロキシ酪酸の生産量が培養液当たりで約10倍、細胞当たりで約4.6倍に増大した。 研究成果は6月7日、「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」誌にオンライン掲載された。今後は大気中の窒素と廃グリセロールからアミノ酸や有機酸の生産も目指すとしている。(笹田)