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私→WRC 第23回

GRヤリスに突如加わった「Light Package」をラリー視点から解説

2022年06月08日 12時00分更新

文● 松井 悠 編集●ASCII

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GRヤリスRCをさらに軽量化した
“Light Package”をWRC経験者が解説

 みなさん、こんにちは。ASCII.jpでもラリーの連載をしている、ウェルパインモータースポーツというラリーチーム代表を務めている松井と申します。トヨタ・GRヤリスで全日本ラリーにスポット参戦しています(梅本まどか、今年こそラリージャパンを目指して、初戦唐津ラリーを完走)。過去にはドライバーとしてASCII.jpとコラボしてWRC(ラリージャパン)にも出場しました(エボマガ×ASCII.jp号 ラリージャパンに参戦!

全日本ラリーに参戦中のGRヤリスRC

 6月3日にGRヤリスRC“Light Package”が追加設定されました。トヨタ・GRヤリスといえば最新の4WDスポーツモデルで、「RC」というグレードはその中でもモータースポーツベースグレードという位置付けです。

 そのGRヤリスRCに「“Light Package”」というグレードが追加されたことは何を意味するのか。カタログを見ると、驚くべきことに「2名乗車」で「塗装レス」が標準だったりと、一般ユーザーにはとてもオススメできる内容ではありません。では何のための設定なのか、ラリーチーム代表という視点から簡単に解説したいと思います。

GRヤリスRCに追加された「“Light Package”」 ※カタログより

 日本の国内モータースポーツはJAFが統括していて、規則もJAFが制定しています。さまざまな車種が国内のモータースポーツで活躍していますが、その改造内容は「JAF国内競技車両規則」に準拠しています。その車両規則では、最低重量などの基準となる数値の決め方が明記されています。

塗装レスしかない! ※カタログより

 たとえばGRヤリスの場合、全日本ラリー選手権のラリーRJ車両という車両カテゴリーになります。 RJ車両における最低重量は「カタログに記載された車両重量から当該車両の燃料タンク容量に比重0.74を乗じた値(小数点以下切り捨て)を減じ、これに安全装備(ロールケージ等)の重量として35kgを加えた値とする。同一車両型式に複数の車両重量が設定されている場合は、その最小値を当該車両の車両重量として適用する」とあります。

 これまでRCは1250kgがカタログの車両重量でした。これがRC“Light Package”では1170kgで、80kgも軽くなっています。車両型式はどちらも同じ「GXPA16-AGFVZ」ですから、これまでのRCユーザーもこの新しい1170kgが基準となるのです。80kgも軽量化できれば、当然GRヤリスはこれまでよりも速くなり、ライバルに対して優位性が生まれます。

GRヤリスRC“Light Package”のスペック表 ※カタログより

 これはホイール&タイヤサイズも同様です。これまでRC純正の最大リム幅は8.0Jでしたが、新たに8.5Jがオプションで選択できるようになりました。RJ車両におけるホイールサイズは「装着するホイールは、同一車両型式のカタログに記載されているホイールの直径、および幅がカタログに記載されている数値を最大値とすることができる」となっていますので、ラリーでも8.5Jを使用できることになります。

 そしてタイヤサイズは「前項規定に合致したホイールを適用リムとし、これに装着できるタイヤとしてJATMA YEAR BOOKに記載されているもの、またはこれと同等なものであり……」とあります。これまでの適用リム幅8.0Jだと245/40R18のサイズが最大でしたが、8.5Jにすることで255/40R18が選択できるようになりました。これでタイヤ的にはライバルである「WRX STI(VAB)」と同じサイズです。

価格表。元のRCより112万円高い ※カタログより

 このようにモータースポーツにおいては、自動車メーカーの発行するカタログ数値や純正パーツの設定は非常に重要です。実際に売れる売れないは別として、とりあえずカタログに明記されているという状況が必要なのです。そのため「無塗装」などと一般的にはありえない手法も含めて、特殊なグレードがカタログ設定されることがあります。通常のRCでこのRC“Light Package”のカタログ数値の恩恵を受けられるわけですから、ラリーユーザーもこれまでどおりRCを使えばいいのです。

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