本連載は、マイクロソフトの「Microsoft 365」に含まれるSaaS型デスクトップ&Webアプリケーション(以下、アプリ)「Microsoft 365 Apps(Office 365)」について、仕事の生産性を高める便利機能や新機能、チームコラボレーションを促進する使い方などのTipsを紹介する。今回は「One Outlook」に注目した。
「Outlook on the Web」と同様の機能・UIの「One Outlook」
デスクトップ版Microsoft Outlook(以下、Outlook)の歴史は古い。25年前の1997年3月に発売された「Office 97 Professional」のコンポーネントである「Outlook 97 for Windows」から始まり、現在に至っている。筆者もWindows 9x時代はスケジュール管理など利便性の高さから、デスクトップ版Outlookを使用していた。だが、PSTファイル(Outlookデータファイル)の肥大化に閉口し、紆余曲折の末に「Outlook on the Web」に落ち着いた。デスクトップ版Outlookの利用を辞めたもう一つの理由が、アプリの鈍重化と肥大化である。前者は過去に利用した読者ならご承知のとおり、デスクトップ版Outlookは軽快なアプリではなかった。後者は機能強化に伴う使いにくさ。現在ならSaaSが機能強化を繰り返すことで、設定項目が複雑化し、ユーザビリティーが低下するケースは珍しくない。正直、デスクトップ版Outlookの機能をフル活用している方は尊敬に値する。
他方でMicrosoftは、Windows 10の標準アプリとして「メール&カレンダー」を用意したのは周知のとおりである。Microsoftアカウントやその他のメールサービス、職場または学校アカウントをサポートし、軽快なメールクライアントと期待して使い続けてみた。だが、基本機能が足りなく、バグも多いため、数年ほどで利用をあきらめた。同社はデスクトップ、Web、UWPアプリと複数のメールクライアントを開発しているが、一つに注力した方が品質や機能向上もはかどるだろう。そんな期待を持たせてくれたのが「One Microsoft」(Project Monarch)だった。
One Microsoftの存在は2021年1月ごろ明らかになり、これまでネット上に一度リークされている。今回もMicrosoftの公式発表はないものの、Windows Centralがゴールデンウイーク中に報じた記事内のリンクはoffice.netのもの。ほぼ公式なバイナリーと捉えて構わないだろう。今回セットアップしてみると、その外観や機能はOutlook on the Webと同じだ。
実際に使って見ると、Outlook on the Webよりも応答性が高く、メール閲覧や作成を素早く実行できるのは高評価だ。メールと予定表の切り替えもOutlook on the Webより若干早く、一枚のウィンドウで完結するのはありがたい(筆者はMicrosoft Edgeでメール&予定表を別タブで開き、ピン留めしている)。現在Outlook on the Webをメインクライアントとして利用している方には有用なアプリとなるはずだ。
Microsoftは既存ユーザーにデスクトップ版Outlookを提供しつつ、One Outlookを主軸のメールクライアントに位置付けるつもりだろうか。正直なところ答えは分からないが、その一端は2022年5月末から開催予定のBuild 2022で明らかになるだろう。なお、今回のOne Outlookバイナリーは脆弱性発覚時のアプリ更新を含んでいないため、BYOD PCなどへのインストールはお薦めできない。ぜひ同社の公式発表後に試してほしい。
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