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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第124回

Knowlesが提唱する新しいターゲットカーブが登場、イヤホン音質の底上げを進めるか

2022年05月23日 13時00分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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 先週、バランスド・アーマチュアドライバーのメーカーであるKnowlesから2つの大きな発表があった。一つは5月17日に発表された「Dual-Diaphragm Balanced Armature」。もう一つは5月18日に発表された「An improved Target Response Curve for Insert Headphones」である。

図の下にあるのが新型BAドライバー

Knowlesの新ドライバーはAstell&Kernも採用!?

 Dual-Diaphragm Balanced Armatureを訳すと二重の振動板を備えたバランスド・アーマチュアドライバーという意味となる。プレスリリースによるとこれは小型のサイズで大出力が可能なドライバーであり、独立した二つの音響室および振動板が単一のコイルに接続された形式ということだ。これにより暖かみのあるクリアで自然な音が可能になるとしている。

 またこの技術は先日発表されたAstell & Kernの新イヤホン「Pathfinder」に搭載されていることが、Knowlesのツイッターで明らかにされている。PathfinderはCampfire AudioとAstell & Kernの共同開発となる製品だ。先日、“春のヘッドフォン祭 2022”のCampfire Audioブースで披露され、ブラインドテストという形で来場者に素性を明かさないままの試聴機が用意されていた謎の新製品群にも採用されていたことが推測される。

 An improved Target Response Curve for Insert Headphonesは直訳すると挿入型ヘッドフォンのための改良されたレスポンスカーブという意味となる。挿入型ヘッドフォンとはいわゆるイヤホンのことと思われる。では、レスポンスカーブとは何だろうか。オーディオ機器の開発に用いるリファレンスの周波数曲線のことだ。

 よくヘッドホンやイヤホンのコメントで「音がフラット」(高音や低音が出過ぎずに全域で平坦)という言葉が用いられる。ただしこれはドライバーの周波数特性そのものがフラットで直線的ということではない。聴感上フラットに聞こえるカーブになっているということだ。本当にフラットな特性にしてしまうと、人間の耳には逆にフラットに聞こえなくなってしまう。

 このために音響メーカーでは、聴覚に合わせて補正した周波数曲線を用意して開発に役立てることが多い。これをターゲットカーブと呼び、よく知られているのがハーマンが自らのスタジオで規定した「ハーマン・カーブ」だ。これはスピーカーのみならずイヤホンやヘッドホンの開発にもよく用いられている。

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