元ウォーカー総編集長・玉置泰紀の「チャレンジャー・インタビュー」番外編
3年に一度、新潟県・越後妻有の世界的な地域アート、大地の芸術祭がGWにスタート
「越後妻有 大地の芸術祭 2022」は2022年4月29日に開幕する。今年は大地の芸術祭が延期になったこともあり、瀬戸内国際芸術祭2022と同時開催になったが、2つの芸術祭の魅力を伝えるトークイベントが渋谷ヒカリエ・8/COURTで4月25日、開催された。特別ゲストは名和晃平(彫刻家)、目(アーティスト)、アレクサンドル・ポノマリョフ(アーティスト。リモート)で、モデレーターは両方の芸術祭の総合ディレクターを務める北川フラム氏が務めた。
大地の芸術祭は、これまでの開催期間は約50日だったが、今回は、11月13日までの145日間。春・夏・秋と季節をまたいで、総数333作品(展示時期は作品によって変わる。新作、新展開の作品は123点)が展示される。
2000年が第一回で、以後、トリエンナーレとして3年に一度開催されてきた。この年は52日間の開催で、来場者は162,800人を記録したが、前回の第7回は、2018年に51日間の開催で来場者数は548,380人に達し、日本の地域アートの大きなムーブメントのフックになり、世界的にも最大級の芸術祭として評価されている。
第8回の今回は昨年開催の予定だったが、コロナ禍のため延期され、今年の開催になった。筆者は第3回から毎回参加しており、総合プロデューサーの福武總一郎氏(ベネッセホールディンクス名誉顧問)は、福武書店(現ベネッセ)の雑誌編集者だった時の上司だったこともあり、フラム氏とともに、現地を回ることも多かった。取材受け入れが始まり次第、現地から続報を送る。
大地の芸術祭実行委員長の関口芳史氏(十日町市長)と総合ディレクターの北川フラム氏の連名で、以下のコメントが出ている。
「今回は4月29日(金祝)から11月13日(日)までと、今までと比べて非常に長い会期となりました。
それは、昨年に芸術祭の延期を余儀なくされ、コロナ禍において芸術祭を開催する方法を考え抜いた結果です。
「行ってよし、来られてよし」の芸術祭を、お客様、地元、アーティスト、サポーターの協働によって、一人でも多くの方に越後妻有を訪れていただき、この土地の魅力を体験していただきたいと願っています」
昨年オープンの越後妻有里山現代美術館 MonETやイリヤ&エミリア・カバコフの新旧9作品『カバコフの夢』などに注目!
新作の中では、本来の開催年だった2021年に改修されてリニューアルオープンした「越後妻有里山現代美術館 MonET(モネ)」(越後妻有里山現代美術館[キナーレ]を改名した)が注目。この日の特別ゲストだった名和晃平(彫刻家)、目(アーティスト)の作品が楽しめる。また、 MonET(モネ)では、新しい企画として、2000年から23年間続いてきた芸術祭ゆかりの作家で惜しくも亡くなったアーティストたちの活動を振り返る「大地の芸術祭2000-2022 追悼メモリアルシリーズ ー 今に生きる越後妻有の作家たち」を開催する。クリスチャン・ボルタンスキーら12人の作家の回顧展を2週間ごとに展示する。
また、1か月前の2022年3月24日の発表会で、強く紹介されたのが、イリヤ&エミリア・カバコフの『手をたずさえる塔』。コロナ禍に見舞われた2年前、「こういう時だからこそ、作品を作る」と言って7作もの作品を制作したのだが、ロシア連邦が2022年2月24日にウクライナへの軍事侵攻を開始したことにより、さらに重く深い問題がのしかかった。
カバコフはウクライナ生まれで、その後は、旧ソ連時代のロシアで生活。1950〜80年代は公式には絵本の挿絵画家として活躍していたが、非公式に芸術活動を続けていた。そして、1980年代半ばに海外に拠点を移し、ソ連的空間を再現した「トータル・インスタレーション」をヴェネツィア・ビエンナーレ、ドクメンタなどに出展し話題を集めた。現在はニューヨーク在住。ウクライナ情勢は勿論、大きな痛みをカバコフに与え、パンデミックを経て『手をたずさえる塔』の点灯を再開する際、赤色と青色で点灯されていた同塔に「黄色を灯したい」という希望が伝えられ、今は一日おきに、ウクライナの国旗の色である青色と黄色が灯されている。
<越後妻有里山現代美術館 MonET>
名和晃平『Force』
【Sponsored by 吉田浩一郎】
【作品制作協力:Sandwich Inc., SCAI THE BATHHOUSE, 株式会社ニッシリ】
新しくオープンしたスペースで、2021年の夏から始動。黒いシリコーンオイルの液体が多数の糸状となって天井から床に常時落下する。シリコーンオイルは重力に従って天地垂直に流れ続け、床に黒い池を形成する。水なら途切れるはずだが、オイルは粘性で繋がり凄いスピードで落ちてくる。時間と空間と物質のはざまに鑑賞者の視点が置かれ、視覚化された重力の様態を見ることができるインスタレーション作品。写真ではなく、実際に見ると、下の池が美しく映える。形が様々に変わる。上下が映り込み、地球や重力の中心を覗きこむような感覚に。水だと水面が乱れるが、この作品ではオイルが着面するところで衝撃が吸収され、周囲は静謐な鏡面が保たれている。
目『movements』
公式サイトの作家コメント。
「無数の小さな時計をムクドリの群れのように配置したインスタレーション作品。
ムクドリの群れは、個々の意志によって自由に飛んでいながら、全体として1つの意志が存在しているようだ。個々の時計固有の意味と、ひたすらに回る運動としての全体。それらは、観る者の視点によって連動する。意味と無意味、主体と客体、個と公、それら両極の間の世界が、里山現代美術館に存在する」
4月25日の発表会での発言。
「8000個の時計をムクドリの群れのように配置した。一つ一つが時を刻んでいる。埼玉のアトリエからムクドリの群れを見ていて、写真とかに撮って着想を得た。どの鳥が命令したわけでも無いのに統制され動きが気になっていた。中にいるムクドリには外から見える様子は分からない。だが、逆に、ムクドリからの視線はどうだろう。どういう気持ちなのか。何故、あそこに集まって一緒に飛ぼうとしたのか。全体と個の関係がいつも気になる。この美術館は大地のスタート。この作品で、見る人のスイッチを入れる」
<カバコフの夢>
イリヤ&エミリア・カバコフ『手をたずさえる塔』
*4.29(金祝)~5.8(日)毎日、5.9(月)~11.13(日)の火水以外
民族・宗教・文化を超えたつながり、平和・尊敬・対話・共生を象徴する塔を制作。塔上のモニュメントは、問題が生じたとき、良いニュースがあったときなどによって、色が変わる設定だったが、ウクライナ侵攻により、青色と黄色が交互に灯されることになった。
<パフォーマンス>
田中泯『場踊り』
*8.12(金)、13(土)、14(日)
公式サイトより。”中谷芙二子の霧の作品を舞台に、田中泯が踊る。過去にはテートモダンや、最近では長野県立美術館など、コラボレーションを重ねてきた二人が、ここ越後妻有に集結。田中泯の「踊りの起源」への絶え間ない調査と堅固なこだわりは、日常に存在するあらゆる場に固有の踊りを、即興で踊るというアプローチによって、「場踊り」という形でより実践への根を深めている。踊りが踊られる場所の中で、そのプロセスを自然に戻す試みなのである”
■開催概要
「越後妻有 大地の芸術祭 2022」作品鑑賞パスポート
【販売開始】 発売中 ※早期割販売は7/29(金)まで
【オンライン販売】https://www.asoview.com/channel/ticket/9nqy9Vjt7P/ticket0000001409/
※上記URLから購入出来る。引換場所にて、引換券又は確認画面を提示。パスポートと引き換えられる。
【有効期間】 2022/4/29(金祝)~11/13(日)※会期中有効
【販売場所】 十日町市総合観光案内所、松代・松之山温泉観光案内所、津南町観光協会、MonET、農舞台 など
【引換場所】十日町駅西口案内所、まつだい駅案内所、津南案内所(苗場酒造敷地内)、MonET案内所、まつだい「農舞台」案内所、清津峡案内所(清津峡渓谷トンネル入坑者用)、下条案内所(利雪親雪総合センター)※期間限定、清津倉庫美術館案内所 ※期間限定
※引換期間: 2022/4/29(金祝)~11/13(日)
【料金】
・早期割料金 一般3,500円/大学・高校・専門2,500円/中学生以下無料
・通常料金 一般4,500円/大学・高校・専門3,500円/中学生以下無料
【利用条件・特典など】
・パスポートの提示で越後妻有地域のお店で利用できる割引サービスの特典あり
・清津峡渓谷トンネルは、パスポートの提示で入坑料が割引 ※要事前予約期間あり
・パスポートの提示でイベント割引あり
・2回目以降の利用はパスポート提示で半額
※ただし、以下の施設は3回まで入館可(4回目以降パスポート提示で半額)
<3回まで入場可能な施設/作品>
・越後妻有里山現代美術館 MonET
・鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館
・まつだい「農舞台」
・奴奈川キャンパス
・越後松之山「森の学校」キョロロ
・越後妻有「上郷クローブ座」、香港ハウス
【パスポートの種類】
・紙パスポートのみ販売。電子パスポートの販売は無い。
・2021年9月にリリースしたスマートフォン向け大地の芸術祭公式アプリ「大地の芸術祭 電子パスポート&ガイド」は、「越後妻有 大地の芸術祭 2022」では、作品情報検索機能及びスタンプラリー機能として、無料で利用出来る。
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