このページの本文へ

最高峰性能の小型マシン「Mac Studio」に新iPhone SE/iPad Air登場! 2022年春のApple Event 第38回

M1搭載iPad Air(第5世代)は「Pro」に肉薄したAir

2022年04月24日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

新iPad Airのパフォーマンスは、iPad Proにどこまで迫ったのか?

 プロセッサーがM1になり、RAMが2倍になったことを除けば、基本的な機能やデザインに大きな変更はないのだから、新iPad Air最大のウリはパフォーマンス以外にありえない。そこで、旧モデルに対してどれだけパフォーマンスが向上したのか、iPad Proにどこまで迫ることができたのか、ベンチマークテストで検証した。結論を先に言えば、事前に予測可能だったことながらiPad Proと「同等以上」の性能を示した。

 今回実際に使用したベンチマークアプリは、CPUとGPUの性能を計測するGeekbench(5.4.4)、機械学習に関する性能を測定するGeekbench ML(0.5.2)、主にスマートフォンの総合的なパフォーマンス評価に使われているAntutu(9.0.9)の3本に、標準ウェブブラウザー、Safariの上でのウェブアプリの性能を測定するためにJetStream 2も加えて評価した。テスト用アプリのバージョンは、旧モデルの計測で使った際とは異なるものだが、結果には互換性があると考えている。

 今回のテストで比較した機種は、発売時期が古い順にiPad Air 第4世代(2020年9月21日)、iPad Pro 12.9インチ 第5世代(2021年5月19日)、iPad mini 第6世代(2021年9月22日)、iPad 第9世代(2021年9月22日)、そしてiPad Air 第5世代(2022年3月14日)の5つとなる。iPad Proについては、以前にレビューした機種のテストデータが12.9インチモデルしかないが、基本性能は同時に発売された11インチの第3世代モデルと同等と考えられる。

 それぞれのテスト結果を見ながら、ざっと考察していこう。

・Geekbench 5
 まずは、それぞれの機種に対して、Geekbenchで計測可能な3種類のテスト結果の数値を一覧表で確認しよう。

 Geekbenchでは、CPU性能について、1つのコアだけを使ったシングルコアと、利用可能なコアをすべて使用したマルチコアの各スコアを別々に計測する。またGPU性能については、グラフィック描画ではなく、数値計算のパフォーマンスを評価する。Geekbenchでは、そのテストをComputeと呼んでいる。

 CPU性能だけを取り出してグラフで比較化してみよう。

 新しいiPad AirのCPU性能は、ほとんどiPad Proと並ぶものとなったことが、ひと目で確認できるだろう。旧iPad Airと比較すると、CPU性能はざっと1.7倍に向上している。

 これは旧iPad AirのCPUコア数が6、新iPad Airでは8であることを考えると、期待以上の結果と言える。GPU性能を評価するComputeのテスト結果もグラフで確認しよう。

 この結果も、ほぼCPU性能と同様の傾向となった。新iPad AirのGPU性能は、ほとんどProに肩を並べている。ただし、CPU性能と同様、わずかながら及ばないのは、同じM1チップでありながら、RAMの容量が異なる(iPad Proは16GB搭載モデル)ためか、iPad Proが12.9インチモデルのため内部容積が大きく、チップの冷却能力が高いためのいずれか、またはその両方の理由によるものと考えられる。

・Geekbench ML
 Geekbench MLは、機械学習についてのCPU性能とGPU性能、さらにはCore MLの性能が計測できる。Core MLは、iOS/iPadOSのAPIの一種であり、ソフトウェアが絡んでくるため、OSのバージョンが新しいほど有利な傾向がある。いずれにせよiPadシリーズでは、いわゆるNeural Engineが使われるものと考えられる。

 まず、5機種の結果を数値で確認しておこう。Geekbench同様、数値が大きいほど高速ということになる。

 次に、この結果をテストの種類(CPU、GPU、Core ML)ごとにグラフ化して比較してみよう。

 テストの種類ごとに傾向が異なることが確認できる。それでも、新しいiPad Airの性能は、どのテストにおいてもiPad Proとほぼ同じレベルに達している。CPUとGPUについては、同じM1チップだけに、まったくと言えるほど同じ結果になっているが、Core MLについては、わずかながらiPad AirがiPad Proを凌いでいる。これは、上に述べたようにソフトウェア(OS、Core ML)のバージョンの違いによるものである可能性が高い。

・Antutu
 スマートフォンの性能評価の指針として用いられることの多いAntutuのテストは、iPadOSでも利用可能だ。一般的には総合スコアの数字が単独で語られることが多い。しかしAntutuでは、CPU、GPU、MEM(メモリ)、UX(ユーザーインターフェース)という4種類のテストを実行し、それぞれの得点の合計値としてのスコアが示される。

 Antutuのテスト内容は、異なるバージョンでは微妙に変化している可能性もあり、過去のテスト結果とそのまま比較できるかどうか不明な点もあるものの、全体としてはある程度参考になる値が出ているように見受けられる。

 ここでは、これまでに示したテストと同じ5機種の結果を、4種類のテスト、およびそれらの合計値として表で確認しよう。

 まずは、総合性能として4種類のテストの合計値を比較する。テストの種類ごとに色分けした積み上げグラフとして示そう。

Antutu(総合)

 これを見ると、M1を搭載したiPad Proと新iPad Airが他を圧倒している。両者の値はほぼ同じレベルと言ってもいい113万前後となっているが、内訳には多少の違いが見られる。そこで4種類のテストを個別に棒グラフで比較してみよう。

Antutu(個別)

 iPad Proと新iPad Airでは、CPUとGPU性能には大きな差がないが、MEMではiPad Proが速く、UXでは新iPad Airが勝っていることが分かる。前者には、メモリ容量の違い(iPad Proは16GB、新iPad Airは8GB)が影響している可能性が高く、後者にはiPadOSのバージョンの違いが表れているものと考えられる。

・JetStream 2
 最後に、ウェブブラウザー上で実行するJavaScriptとWebAssemblyの実行速度を評価するJetStream 2の結果を見ておこう。これは、Safariでbrowser bench.orgのページを開いて「JetStream 2」のテストを実行し、そのスコアを、やはりiPadの5機種で比較した。

 結果の数字を表で確認する。もちろん数値が大きいほど高速だ。

 グラフで比較すると、iPadの機種による結果の差が、これまでのテストよりも小さくなっていることがひと目で確認できる。

 これは、日常的に使用頻度がもっとも高いアプリでの実行結果だけに、一般的な用途での体感速度には、これまでのテスト結果として見てきたほどの性能差は感じられないと考えていい。それでも、iPad Proと新iPad Airが他よりも優れていることは間違いなく、特に新iPad Airの優位が目立つ結果となった。何度も言うように、これにはOSやアプリ(Safari)のバージョンが影響しているものと考えられる。

カテゴリートップへ

この連載の記事

ASCII.jp RSS2.0 配信中