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東北大、リチウム電池正極材料合成で脱レアメタル依存

2022年04月13日 06時26分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東北大学の研究チームは、コバルトやニッケルなど一般的にリチウム電池正極の材料に使われるレアメタル以外の元素を多く含むリチウム電池正極材料の合成に成功した。リチウム電池の正極材料には、コバルトやニッケルといった層状岩塩型の結晶構造を有する特定のレアメタルを多く含む材料を用いるのが一般的だが、こうした特定レアメタルだけに依存しない柔軟な材料設計ができるようになる可能性がある。

東北大学の研究チームは、コバルトやニッケルなど一般的にリチウム電池正極の材料に使われるレアメタル以外の元素を多く含むリチウム電池正極材料の合成に成功した。リチウム電池の正極材料には、コバルトやニッケルといった層状岩塩型の結晶構造を有する特定のレアメタルを多く含む材料を用いるのが一般的だが、こうした特定レアメタルだけに依存しない柔軟な材料設計ができるようになる可能性がある。 層状岩塩型の結晶構造を有するレアメタルは、他の安価な元素を混合しようとしても、一定の濃度を超えると、いわば水と油のように「相分離」してしまう性質がある。研究チームは、従来のように少数の元素種を混合するのではなく、発想を逆転。多数の元素を同時に混合してエネルギー利得(配置エントロピー)を高めることで、単一の相からなるリチウム電池正極材料の合成に成功。さらに、そのようにして得られた正極材料の充放電時における劣化機構の詳細を明らかにすることで、新規高性能材料の開発に指針を示した。 今回の研究により、これまで利用が困難であった元素がリチウム電池の正極材料に利用可能になるだけでなく、新たな物性の発現や、分解抑制による安全性の向上、特定元素への依存による商業的リスクを低減した、新規な材料開発が可能になると期待される。研究成果は2022年4月11日に、米化学会が発行するACSアプライド・エナジー・マテリアルズ(ACS Applied Energy Materials)にオンラインで公開された

(中條)

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