ファーウェイが2021年のアニュアルレポートを発表して、ASCII.jpでもすでにレポートを掲載したが(「ファーウェイ2021年決算は大幅減収、中国での5G構築が一段落も響く」)、さらに詳しく内容を見ていこう。コンシューマービジネスでは厳しい状況が続く同社だが、しっかりと収益性を高めているようだ。
カナダから帰国した創業者の娘である孟晩舟CFOが
4年ぶりに登場した発表会
まずは驚きだったのがMeng Wanzhou(孟晩舟)氏の登場だ。
孟晩舟氏と言えば、2018年末に乗り継ぎで着陸したカナダの空港で逮捕されて渦中の人に。米国はその後、ファーウェイへの制裁を強めたため、米国対ファーウェイの構図が明確になる象徴的な事件となった。容疑は、同社が関係する香港のSkycom社を通じて、米国製技術が使用されている製品の輸出が禁じられているイランと取引したというもの。
孟晩舟氏は当初容疑を否認していたが、金融機関に誤った説明をしたという米司法省の主張を認める代わりに、米司法省は米国への身柄引き渡し要請を取り下げるという司法取引が成立。2021年9月、約3年ぶりに中国に帰国した。
チャーター便が深圳の空港に到着、真っ赤な洋服を着て登場した孟晩舟氏は、数百人に出迎えられて英雄となった。孟晩舟氏は、創業者Ren Zhengfei(任正非)氏の娘でもある。
その孟晩舟氏が、3月28日のアニュアルレポート公開に合わせた発表会に登場。黒いスーツ姿の孟晩舟氏は主として財務の報告を、輪番CEO(3月時点)のGuo Ping(郭平)氏が戦略や方向性を説明した。孟晩舟氏にとっては帰国後の初の大舞台となった。なお、アニュアルレポートの発表会に登場するのは2018年以来という。中国のメディアからは帰国してからどのように過ごしているのかといった質問も出ていた。
それから約1週間後、孟晩舟氏がCFO職に加え、輪番会長にも着任することが明らかになった。ファーウェイは3人の輪番会長が6ヵ月おきにトップを交代するCEO輪番制を導入しており、4月1日にGuo氏からのバトンタッチとしてKen Hu(胡厚崑)氏が就いたばかりだ。同氏の任期は2022年9月まで。早ければ10月にも、孟晩舟氏が最初の任期を迎える可能性がある。
収益力をアップして体質改善をアピール
自動車のプラットフォームビジネスを強化
2021年の決算は複雑な内容となった。収益は2020年比で29%減の6368億人民元(約12兆3480億円)、一方で純利益は前年比76%増と大きく伸びた。負債比率は57.8%、これは2020年の62.3%から低下し、資本構造を強化した。孟晩舟氏は、「不確実性への対応力が改善した」とコメントしている。
コンシューマービジネスでは米国による制裁などが影響し、売上は前年比50%減の2434億人民元(約4兆7200億円)となった。スマートウォッチやリストバンド、ワイヤレスイヤホンなど製品の多様化を図ってきたが、スマホのマイナスをカバーすることはできなかったようだ。
同社はスマートフォンでは、Honorを2020年末に売却すると発表し、事業移管は昨年に完了している。もう1つ、サーバー製造を担う完全子会社のxFusion Digital Technologiesも外部に売却している。
コンシューマー分野で気になるのは「HarmonyOS」と「HMS(Huawei Mobile Service)」の動向だ。Harmony OSはすでに2億2000万台に搭載されており、エコシステムプログラム「HarmonyOS Connect」に参加するパートナー企業は1900社以上。2021年だけで新たに1億1500万台のHarmonyOS Connectデバイスが出荷されたという。製品分野としては、スマートフォン、タブレット、車(Intelligent Cockpit)など。たとえば車載用途の「HarmonyOS Intelligent Cockpit」では、自動車のアプリとスマホやスマートホームシステムとのシームレスな連携が可能になるという。
HMSではアプリの数がは2020年から147%増加したという。ダウンロードの回数は4320億件を超えたと報告している。
ファーウェイは通信事業者、コンシューマー、そして法人の大きく3つの事業を柱とするが、新しく立ち上げたのがIntelligent Automotive Solutionだ。自動車分野で進みつつあるコネクテッド、自動運転などのトレンドに向けて、自動運転ソリューションを提供するというもので、HarmonyOSを活用する。
2021年は30以上の自動車向けコンポーネントをローンチしたとしている。Guo氏は「ファーウェイが自動車を作るということはない」と強調しており、ここでは自動車メーカーと協業するのが戦略となる。
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