以前シンガポールにあるダイソンの開発拠点を訪れたとき、開発と研究の距離が近いことに驚きました。エンジニアが製品の原理試作をするとき、隣室の研究者とすぐ話せる、リサーチ・アンド・ディベロップメントを具体化したような拠点のありかたに感心したことをおぼえています。
シンガポールで見たのは音響工学や流体工学のラボでしたが、英国には細菌などについて研究する微生物研究ラボがあり、今年2月にグローバルダスト調査という意識調査の結果を発表しています。
調査結果によれば、ペットの飼い主の約7割が、ハウスダストと呼ばれるダニの死骸やダニのフンなどがペットに付着している可能性に気付いておらず、寝具の掃除をしているのは約3割のみだったということ。要するに、目に見えない汚れをキレイにするという発想がなかったという話です。
思い出すのはスティック掃除機の「Dyson V12 Detect Slim」。ピエゾセンサーで吸引したゴミ(粒子)の量とサイズを計測し、必要に応じて吸引力を高めるゴミセンサーを搭載した最新機種です。手元の液晶ディスプレーではゴミの量をサイズ別に表示するという面白い機能も持っています。目に見えないほど小さな粒子もちゃんと吸いとっているということがわかるわけですね。
ダイソンの取材協力により、微生物研究ラボ リサーチ サイエンティストのデニス マシュー氏、掃除機の集じん性能やサイクロンの分離性能を担当するシニア メカニカル エンジニアのジェームズ マクリー氏にオンラインで話を聞いたところ、こうした掃除機を開発するときはやはり設計段階から密接に関わっているということでした。「バクテリアにはどれくらいの吸引力が必要なのか」「家庭にはどんなサイズの粒子が多いのか」「アレルギーが起きないようにするにはどうすればいいか」といったことを相談しながら、製品の核になる技術をどう搭載するか判断していくのだと言います。
その成果として生まれてきたのが、粒子を99.99%補集できるヘッド、小さくても分離性能が高いサイクロン機構、密閉度が高いフィルターなど、ダイソンが強みとする掃除機のパーツ群。ダイソンでは業界標準の試験に加えて同社独自の試験もしていますが、それは実際の利用環境でどのようなゴミや粒子が舞っているのかを研究所で調べているからこそなのだということでした。
普段何気なく使っている掃除機やドライヤーの中にこうして最新の研究成果やテクノロジーが反映されているのだと思うと、なんだかぞくぞくしてきますね。最新鋭のテクノロジーでお菓子の食べかすをきれいにしてもらっていると思うと、なんだか申し訳ない気持ちにもなってきますが……。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。5歳児と1歳児の保護者です。Facebookでおたより募集中。
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