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写真家 鹿野貴司「Pixel 6 Pro」テストレポート 第4回

グーグル「Pixel 6 Pro」光を味方に印象的な演出「長時間露光」を解説【写真家 鹿野貴司レビュー】

2022年03月21日 12時00分更新

文● 鹿野貴司 写真●鹿野貴司 編集●飯島恵里子/ASCII

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横断歩道を渡る人たちも、「長時間露光」ではうっすらとした影に。なんだか気配を消した忍者のようである。完全に姿を消すには30秒くらいの長いシャッター速度が必要で、そこまで実現したら使いみちがもっと広がると思う

 前回取り上げた「アクションパン」と対をなす機能として、同じ「モーション」の項目に「長時間露光」というモードがある。これが今回のお題。「アクションパン」が背景を流すことで動く被写体のスピード感を表現するなら、「長時間露光」は動く被写体そのものを流してしまう機能だ。したがって主となる要素は人物や乗り物ではなく、静止している風景ということになる。あるいは人物など動く被写体を消したいときにも使える。

こちらが通常撮影バージョン

 一般には使い方や結果をイメージしにくい機能かもしれないが、夜景に車のヘッドライトの光跡が写っているような写真は誰もが見たことがあると思う。あれはまさに長時間露光。花火大会のポスターなども、花火が打ち上がる直前から、花が開いて消えるところまで数秒間シャッターを開ける長時間露光だ。多くの人は「打ち上げ花火の絵を描いてください」といわれると、光跡が大きく開いた様子を描くと思う。

 しかし速いシャッター速度で一瞬を切り取ると、光跡の一部分しか写らず、その光跡も細く暗くて“大輪の花”とは程遠い。そこで打ち上がる直前から火花が消えるまでシャッターを開き続けることで、光跡をしっかりと写すというわけだ。

 またこれは特殊な表現だが、雑踏を数分単位のシャッター速度で切り取ると、通行人の姿は流れてしまって写らない。あるいは立ち止まっている人が多い場合、モクモクと雲や煙のように写る。動いているものがモクモクあるいはモヤモヤと写るのは長時間露光の特徴で、風景撮影では海や川、滝など水の流れがよくモチーフになる。

 撮影自体にとくべつなテクニックは必要ないが、明るい日中の屋外でそれを撮影するには、かなり濃い目のND(減光)フィルターが必要と、三脚も必須になる。とにかく、まあ準備と手間がかかる。

水面を撮影して効果の有無を比較。左が「長時間露光」、右が通常撮影。ちなみに「アクションパン」と同じく、通常撮影をした“処理前”の写真も同時に記録される

 それがPixel 6/6 Proでは、スマホ1台で撮れてしまう。手ブレが許容範囲を超えるとそこで撮影が終わってしまうため、スマホを静止させる必要はあるが、しっかり脇を締めて構えれば大丈夫。あとは、強力な手ブレ補正がサポートしてくれる。近くに手すりやベンチなどの構造物があれば、そこに本体を置いたり添えたりするなどして撮影するのもいい。ただし歩道橋は、他に歩行者がいると揺れるので注意されたし。ちなみに今回お見せする作例は、すべて手持ちで撮影している。個人的には手持ちで撮れるのが魅力なのであって、失敗したら撮り直すくらいの気持ちで撮るのが楽しいと思う。

 難をいえばシャッターの秒数が指定できず、また数秒程度で終わってしまう。どうやら動く被写体を記録したと認識した時点でシャッターが閉じる(撮影が終わる)仕組みのようだ。なので雑踏から人をきれいさっぱり消し去るには秒数が足りないばかりか、冒頭に書いた「夜景に車のヘッドライトの光跡が写っているような写真」も、光跡を重ね合わせて明るくするということが難しい。それを少しばかり解消する方法は、なるべく望遠気味で撮ること。望遠の圧縮効果(当連載の第2回を参照)で光跡を束ねることで、少しばかり明るく見せることができる……かもしれない。

 ここはぜひグーグルさんにさらに頑張っていただき、10秒くらいの長時間露光も可能にしてほしい(すでにライバル機種にはあるし……)。

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