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製造業専任組織を設置し広範なDX支援を展開、ソニー、リコー、コマツ産機、旭化成の協働事例も

日本MSが製造業DX支援の現状を披露、ソニーなど4社はDX事例を紹介

2022年03月17日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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ソニー:ハードの強みを生かしたソリューションをスクラム手法で開発

 今回の説明会では、日本の製造業4社におけるDXの取り組み事例についても、それぞれ概要が紹介された。

 ソニーは、今年2月に発表した“穴が開いた”(周囲の音も聞こえる)完全ワイヤレスイヤフォン「LinkBuds」を活用した「目と耳をふさがないコミュニケーション」のソリューションを、マイクロソフトの「Azure Communication Service(ACS)」との連携により提案している。まずは医療分野におけるスタッフ間の手軽なコミュニケーション手段として提案する計画で、今年4月から病院での実証実験を開始する。その成果をもとに建築現場や製造現場、対面サービスの現場での活用にも展開していくという。

 今回のソリューション開発においては、マイクロソフトのエンジニアによるサポートのもと、スクラム開発手法を採用している。両社から日本、インド、台湾、中国のエンジニアが参加し、スクラム開発の実行管理に「Azure DevOps」を活用しながら、双方のエンジニアリング知見を共有するとともにスピーディーな開発を実現した。

 「ソニーのハードウェアの強みと、マイクロソフトのクラウドソリューションの強みを生かしたコミュニケーションサービスを実現し、迅速に実証実験へとつなげることができた。スクラム開発の経験は今後、ソニー社内でも生かしていく」(ソニー ホームケエンタテイメントサウンドプロダクツ事業本部モバイルプロダクト事業部モバイル商品企画部 部長の伊藤博史氏)

ソニーの「LinkBuds」と「Azure Communication Service(ACS)」を組み合わせたコミュニケーションツールを開発中

リコー:複合機数百万台の利活用データを生かしてライフサイクル管理

 リコーでは、OAメーカーからデジタルサービスの会社への転換を図るなかで、社員自らがデジタルを活用した新しい仕事の仕方とデータの利活用を実践している。具体的には「Microsoft 365」を社内のコラボレーション基盤として活用し、オープンなデータ共有、ワークフローの自動化、データに基づいた意識決定、セルフマネジメントなどを実践することで、生産性が高い働き方を実現しているという。

 さらに、工場で発生するデータや、数百万台のMFP(複合機)から収集する利活用データなどに基づいて製品のライフサイクル管理を行うために「Azure Synapse Analytics」や「Power BI」などを活用している。「これまでは『起きたこと』をフィードバックして製品品質を制御する考え方だったが、AIの活用によって『起きること』を予測してフィードフォワードで工程を制御し、品質の安定化や次機種の開発に反映させていく仕組みへと移行していく」(リコー ワークフロー革新センターの浅香孝司所長)と説明した。

リコーにおける働き方の改革、データ活用による製品ライフサイクル全体の改善

コマツ産機:ローコード/AI活用でプレス機械の予知保全を実現

 コマツ産機では、「Azure Machine Learning」を活用した生産設備の予知保全に取り組んでいる。同社の主要製品であるプレス機械では、部品を一定期間ごとに交換する定期保全が一般的だが、保全コストの最適化が難しいという課題がある。コマツ産機が提供する「産機Komtrax」では、各種センサーを取り付けて状態監視を行うだけでなく、データをクラウドに収集して現場に行かなくてもサポート対応が可能になる。さらに、AIの専門知識がないなかでも、Azure Machine Learningを活用した「異常予知AI」を構築。同社製品を導入しているトヨタ自動車では、この仕組みを活用して、プレス機械の安定的な稼働を実現しているという。

 コマツ産機 ICTビジネス推進室の道場栄自室長は、プレス機械の主要駆動部を構成するモーター、ベルト、等速減速機などは機械的に結合されているため、波形情報(振動など)が各部品の劣化を知らせるデータとなり、「AIを活用すればそこから劣化部位が特定できると考えた」と語る。Azure Machine Learningは、AIとしての性能に遜色がなく、ローコードで利用できることに加えて、学習モデルの構築やチューニングについては日本マイクロソフトの技術サポートチームから手厚い支援が受けられたという。「Teamsを活用したハンズオンミーティングによるサポートも生かし、短期間で実装することができた」と紹介した。

コマツ産機による「Azure Machine Learning」を活用した予知保全

旭化成:データ管理基盤の構築とデータ活用人材の育成を進める

 旭化成では「DX Vision 2030」を打ち出して全社的にDXを推進しており、データ基盤の整備や、DXを推進する人材の育成に取り組んでいる。

 DX推進においては、400以上ものテーマに取り組む一方で、その中核となるデータマネジメント基盤の構築に着手した。ここで「Azure Data Factory」や「Azure DataLake Storage Gen2」といったAzureのサービスを活用し、構造化/非構造化データをカタログ化して管理している。旭化成 常務執行役員の久世和資氏は「現場で使ってもらえるデータマネジメント基盤にすることが大切」だと述べ、現場のアプリケーション開発チームと一緒になって基盤構築を進めているとした。現在はデータ品質の確保や効果的な処理のための仕掛けを行い、AI/機械学習も活用しながらデータ分析を実施しているところだという。

 一方で、データ活用人材である「デジタルプロフェッショナル人材」の育成には4年前から取り組んでいる。加えて2021年からは、全社員を対象とした「デジタル人材4万人プログラム」を、eラーニングを活用して実施。すでに全社員の半数以上となる2万3415人がレベル1の認定を取得している。また、日本マイクロソフトのPower BIを現場で活用するためのコンテンツなどを用意し、現場でのDX促進を支援していることも明らかにした。「DXの推進にはデータ、人材、組織風土が重要だ」(久世氏)。

旭化成ではマイクロソフトとの協働でデータ活用基盤の構築、データ活用人材の育成に取り組んでいる

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