製造業専任組織を設置し広範なDX支援を展開、ソニー、リコー、コマツ産機、旭化成の協働事例も
日本MSが製造業DX支援の現状を披露、ソニーなど4社はDX事例を紹介
2022年03月17日 07時00分更新
日本マイクロソフトは2022年3月15日、「製造業のDX支援」についての最新の取り組みを紹介した。それに合わせてソニー、リコー、コマツ産機、旭化成の製造業4社が、マイクロソフトとの協働で進めてきた「製造業向けDXシナリオ」の取り組み成果を発表した。
製造業エンタープライズ専門組織を設置、より広く深い支援を目指す
エンタープライズ製造事業本部で本部長を務める渡辺宣彦氏は、「日本マイクロソフトのエンタープライズビジネスは国内トップ300社を対象としており、そのうち製造業が157社(グループ)を占める」と説明する。日本マイクロソフトでは2021年10月、産業横断型のエンタープライズ事業本部から製造業を対象とする組織を切り出し、新たに「エンタープライズ製造事業本部」を設置した。同事業本部の対象となる顧客は、上述した製造業157社(グループ)である。
ここでは「素材から完成品まで」という製造業のバリューチェーンに留まらず、電力/エネルギー分野なども対象とする営業/サポート組織体制を確立した。さらにハイタッチ営業体制だけでなく、製造業の特徴にフォーカスしたビジネス転換を行えるように、製造業に知識を持つエキスパートを育成/配置し、製造業界と一体化してDXを推進する体制を整えたという。
「企業それぞれにあわせたDX推進を支援するため、戦略レベルから相談している。なかには、戦略的パートナーシップにより踏み込んだブログラムを用意している例もある」(渡辺氏)
渡辺氏は「テクノロジーやソリューションを提供するだけでなく、オープンイノーベーションを実践するためのハブとしての役割、人を中心としたDXの支援も行っていく。ビジネス構築、スキルアップの観点からも支援をしていく」と述べる。そのうえで「デジタルフィードバックループ構築支援」「新しい製品・サービスのアジャイル開発支援」「従業員のデジタル武装/DXスキル獲得支援」の3点から、日本の製造業が取り組むDXを支援していく考えを強調した。
世界レベルの先進的工場が少ない日本、DX推進の波を大きなものに
日本マイクロソフトでは、製造業向けDXシナリオとして8つの領域にフォーカスしている。なかでも製造業に特化したものとして、ライフスタイルに応じた生産性の高い労働環境を実現する「従業員の働き方改革」、デジタルマーケティングをはじめとして顧客満足度の向上や複合的な顧客接点を確立する「新しい方法でお客様とつながる」、工場オペレーションの高度化や設備効率向上、技能伝承の促進につながる「アジャイル工場の構築」、可視化と計画精度向上、在庫コストの削減、品質保証を行う「レジリエント・サプライチェーンの構築」、製品サービス投入期間の短縮や設計開発でのデータ活用の促進を図る「イノベーションの加速や新しいサービス」の5領域を掲げる。
製造業を取り巻く現状について、日本マイクロソフト 業務執行役員 エンタープライズ製造事業本部製造営業統括本部長の横井伸好氏は「工場などのフロントラインで働く従業員が、より効率的に、安全に働くことができる環境に改善したいというニーズがとくに高い」と説明する。ほかにも、海外工場への出張ができない現状のなかでMR技術(HoloLens)を活用する遠隔支援ニーズ、IoT/AI/デジタルツイン活用のニーズ、持続可能な(サステナブルな)サプライチェーン再構築のニーズも多いという。
「製造業は、日本のGDPの約20%を占める『強く大きな柱』だ。ただし、日本の製造業が世界のデジタル化を牽引している状況ではない。世界経済フォーラムのLighthouse(グローバル・ライトハウス・ネットワーク)ではデジタル活用の先進的な工場を選定しているが、世界約90工場のうち日本は2工場だけ。“製造業大国”であった日本の立場が、デジタルの時代に問われている」(横井氏)
もっとも、これまで2年以上にわたるコロナ禍を通じて、日本の製造業におけるDXもようやく本格化してきたと感じる、と横井氏は続けた。DXの推進体制が整い、バリューチェーン全体でもPoCの取り組みが増えているのが現状だ。
「マイクロソフトは、世界の製造業に対するDX支援の実績やノウハウがあり、世界のLighthouse工場の半数以上に関わっている。これを活用することで、日本の製造業におけるビジネス価値の実現を支援できる。また、DXを実現するためのさまざまなテクノロジーを持っており、『Surface』や『Xbox』といった製品を作る“製造業としてのマイクロソフト”が自ら取り組んで来た経験も生かすことができる。ようやく芽が出て、葉っぱになったところなので、これを大きなムーブメントとして森に育てていくための支援をしたい」(横井氏)