産業技術総合研究所(産総研)などの研究グループは、透過電子顕微鏡を使ってごく微量の同位体元素を検出する技術を開発した。既存の同位体検出技術よりも1~2桁以上高い空間分解能を達成した。
産業技術総合研究所(産総研)などの研究グループは、透過電子顕微鏡を使ってごく微量の同位体元素を検出する技術を開発した。既存の同位体検出技術よりも1~2桁以上高い空間分解能を達成した。 透過電子顕微鏡は、物質の構造や構成元素を原子レベルで解析できるが、一般的な透過電子顕微鏡像は原子の荷電状態が反映されるため、電荷を持たない中性子の数は像に反映されない。そのため透過電子顕微鏡像のみでは中性子の数が異なる同位体を区別できなかった。今回の研究では、単色化電子源を搭載した透過電子顕微鏡を利用し、電子線が試料を通過する際に失うエネルギーを計測して元素や電子状態を調べる「電子エネルギー損失分光(EELS)」によって高精度に計測する技術を開発。中性子一つ分の重さの違いを振動エネルギーの差として検出し、透過電子顕微鏡を使った同位体の識別および、原子レベルでの可視化に成功した。 同位体の検出には、電子線が通過する中心軸から少し逸れた場所で電子を分光する「暗視野法」を使用。原子核のすぐ近くを通過して高角に散乱された電子のみを選択的に利用し、空間分解能の悪化をもたらす小角散乱電子を除去することで、高い空間分解能を実現した。 研究成果は3月2日、ネイチャー誌に掲載された。(笹田)