「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」始動! vol.4

【連載/新宿再開発】東西の新宿をキャンドルでつないだ「Candle Night @ Shinjuku -新宿想い線-」。未来に思いをはせた4日間 

文●岡田知子(BLOOM) 写真●曽根田 元

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2021年12月に新宿駅東口駅前広場(左)と新宿中央公園(右)で開催された「Candle Night」。今回初開催となった東口の会場にも、多くの人が訪れた

 毎年、クリスマスシーズン恒例の参加型イベント「Candle Night(キャンドルナイト)」が2021(令和3)年も開催された。今回は、新たに東口にも会場を設け、2021年12月17日・18日は新宿駅東口駅前広場、24日・25日は西口の新宿中央公園「水の広場」で開催。多くの人が参加し、このまちへの想い、未来への希望などをキャンドルに託した。

恒例の冬のイベントが鉄道5社による開催となってパワーアップ!

 
 「Candle Night」は、2018(平成30)年から毎年、小田急電鉄株式会社が主催となり、新宿西口の新宿中央公園で開催してきた参加型イベント。4回目の2021年は、地域のさまざまな団体から構成される「Candle Night @ Shinjuku実行委員会」に、京王電鉄株式会社、西武鉄道株式会社、東京地下鉄株式会社(東京メトロ)、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)も加わり、開催された。新宿で鉄道5社が共同する初のまちづくりイベントとなった今回への思いを、小田急電鉄株式会社まちづくり事業本部 新宿プロジェクト推進部の渡邉宗大さんはこう語る。

 「ただイルミネーションやツリーを見るだけでなく、『自分も一緒にイベントをつくっている』という思いを感じていただけるイベントを開催したい、と始めたのが、この参加型の『Candle Night』です。これまでも新宿区、新宿中央公園、西口にある工学院大学の学生の力を借りながら開催してきましたが、次の形を考えていました。 そんなとき、多様な活動を生み出す次世代のターミナル『新宿グランドターミナル』の実現に向けて鉄道5社が一緒に参画することが決まり、5社がタッグを組めば『Candle Night』もより良いイベントにできるんじゃないかな、と思っていたところ、JR東日本の担当者もまさに同じことを考えていたようでした。

 『新宿西エリアにある新宿中央公園に加えて、新宿駅東口駅前広場をもう一つの会場とすれば、“これから始まる新宿の西と東がつながる開発”を表現できるのではないか』と一緒に話をし、鉄道5社みんなで計画を始めました」

イベントのサブタイトル「新宿想い線」は、キャンドルの装飾に込めた一人一人の新宿に対する“想い”を、線路のようにつなぐことから付けられた

 開催前、京王電鉄株式会社 新宿再開発推進室の北原朋実さんは「新宿の東西に、実際に私たちの手で明かりをつけていくことができるイベントだと思いました。現在、鉄道5社で『新宿グランドターミナル』の再編について日々検討している中で、『私たち自身でまちを盛り上げていくんだ』という意識を強く持てるいい機会になると思います」とコメントしていた。
 

初の東口開催はあらゆる世代の駅利用者が参加して大成功!

会場では無料のぬり絵シートを用意。参加者は色や文字で自由に装飾してオリジナルのキャンドルホルダー作りを楽しんでいた。

 実際、12月17日・18日の会場となった新宿駅東口駅前広場では、駅前ということもあり、老若男女を問わず、多くの人がキャンドルをともした。2日間で用意されたキャンドルは約1,000個。参加者は用意されたぬり絵シートに色を塗ったり、書き込みをしたり、完成したキャンドルと一緒にスマホで写真を撮ったり。思い思いにこのイベントに参加していた。

会場で無料配布されたのは、電車や切符などをデザインした7種のぬり絵シート

 「7種のぬり絵シートがどれも素敵で選ぶのに悩んでしまいました。ぬり絵をしたのは子どものとき以来で、楽しかったです」とは、調布から来場した20代男性の参加者。神奈川県葉山から来たという10代の女性は、「新宿でこんなイベントがあるとは知りませんでした。駅前で誰でも気軽に参加できていいですね」と、初めての参加を楽しんだようだ。

自分だけのぬり絵シートが完成したら、キャンドルホルダーに装飾して、好きな場所に

産・学・公が一体となって新宿のまちを盛り上げる!

 
 今回、企画からぬり絵シートなどのデザイン・制作・運営は、新宿駅西口にキャンパスを構える工学院大学の学生プロジェクト「まち開発プロジェクト-Smart Tech-」が担当。

 「新宿のまちは駅で東西が分断されていますが、今回は鉄道4社が新しく参入し、東口でも開催されることになって、新しいコミュニティーが東西に広がっていったのを感じました」と、代表を務める3年生の永山勝也さん。

 「今はまだ、新宿に文化を定着させる種まきをしているところ。『Candle Night』もその一つです。これから新しく参加する企業ともコミュニケーションをとって、いろいろなアイディアを出し合って、新宿のまちを盛り上げていきたいと思っています」

 工学院大学情報学部の学部長で「まち開発プロジェクト-Smart Tech-」の顧問も務める三木良雄教授もこう話す。

 「西新宿を舞台に『人と人とがつながる活気あるまち』をつくるべく活動していますが、一番の大きな目標は、こういうイベントを一緒にやる仲間を増やしたい、みんなを巻き込んでいきたい、ということ。同じ場所にいる同じ志を持った人が一緒になってまちをつくっていく、というのが大事だと考えています。

 今回、小田急電鉄さんの思いに賛同して、鉄道4社が新しく参入し、一丸となって『Candle Night』をつくり上げました。今後の展開も楽しみです」

2020年に好評だった「オンラインぬり絵」もバージョンアップ。西新宿のIT企業「グロースエクスパートナーズ株式会社」が開発し、会場に来られなくても、オンラインでぬり絵を投稿し、特設サイトで観賞することができた

 東口の会場に立ち会っていた、東日本旅客鉄道株式会社 事業創造本部 まちづくり・地方創生部門 新宿基盤計画プロジェクトの廣川祐子さんも、「『新宿グランドターミナル』を再編するに当たり、企業だけでなく、このまちの人にも参加してもらって、みんなで新しい新宿というものをつくれたらいいなと考えていました」と話す。

 「2021年は東口でも開催されて、駅の東西がつながり、東口に新しい光景をつくり出せたのかな、と感じています。特に東口の駅前で開催することで、いろいろな世代の人が知ってくださり、参加してくださったのはよかったです」
 

西口の会場にはプロジェクションマッピングや音声ARなど初企画も登場

 
 12月24日・25日に開催された新宿中央公園は、クリスマスのイブと当日ということもあり、たくさんの家族連れやカップルでにぎわった。公園の象徴でもあり、「新宿ナイアガラの滝」が流れる「水の広場」前の会場に用意されたキャンドルは2日間で3,000個。開放的な広場のすぐ隣には東京都庁の夜景が迫り、キャンドルの明かりとともに幻想的な光景をつくり出していた。

園内では冬のイルミネーションイベント「TWINKLE PARK」も開催されており、「Candle Night」と合わせて楽しんだ人も多かった

 2021年は、二つの新しい試みもあった。一つはプロジェクションマッピングだ。工学院大学の「まち開発プロジェクト-Smart Tech-」が手掛けたもので、テーマは「古の新宿をしのぶ」。昭和30年代にこの場所にあった淀橋浄水場、昭和50年代のオフィス街など、現在のにぎやかな西新宿からは想像もできない希少な映像が「新宿ナイアガラの滝」に投影され、多くの来場者が足を止めていた。

その昔、西新宿にあった滝を描いた浮世絵なども映し出された

 もう一つが、無料アプリ「SARF」の音声ARによって園内の特別な散策を楽しめるイベント。「友達」「カップル」「夫婦」「家族」から選べる4つのストーリーが用意され、スマホ画面に表示された特定の場所に参加者自身が移動すると、その場でしか聞けない音声や音楽が自動的に流れ、参加者同士のコミュニケーションを促すものだ。新しいエンターテインメント体験が、特別な夜を盛り上げたよう。

園内随所に案内板を掲示。その場でアプリを無料ダウンロードし、音声や音楽とともに散策を楽しむ来場者も

 計4日間を通じて、東西の会場には延べ約2,500人が参加、オンラインぬり絵サイトには延べ約1,300人がアクセス。人々の想いが込められたぬり絵は、リアル、オンライン合わせて1,856枚集まった。東京地下鉄株式会社 事業開発本部の近藤克彦さんは、「こういうイベントを開催することによって、新宿というまちが一つの方向に向かっている感じがします。キャンドルを灯台に見立てて、行く先を照らしてくれるようなイベントになったと思います」と達成感を得たようだ。

 開催前、「地域の方たちと盛り上げて、新宿の魅力アップにつながる楽しいイベントになれば」と話していた西武鉄道株式会社 鉄道本部 計画管理部の油井瑶子さんは、「多くの方にぬり絵にもご参加いただき、寒い中ではありましたが、気持ちの温まるイベントになったのではないかと思います」と感想を述べていた。

 小田急電鉄株式会社の渡邉さん(前出)は、「東西をつなぐイベントを開催できたのは非常にうれしいです。今後も地域の方々と一緒に新宿を象徴するイベントをつくっていくことを目指しています」

 また、渡邉さんと一緒に企画から当日の運営までを担当した、通称“キャンドルボーイ”の大島佑介さんは「今回、西新宿小学校の子どもたちや西新宿シニア活動館など地域の多くの方々が開催のお手伝いに来てくれました。私たちの想いや行動に参加者の方々が共感してくれて、さらに先の行動につながるイベントになったと感じています。来年も、地域の方々とこのようなイベントをつくっていきたいです」と、最終日のようすを見て話してくれた。

 初の東西開催となった今回の『Candle Night』をきっかけに、これから新宿は、人々や企業がさらに一致団結し、パワーアップしていくはず。どんなまちになってゆくのか楽しみだ。

関連サイト

Candle Night @ Shinjuku -新宿想い線-

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