「アズ・ア・サービス(aaS)」モデルがさまざまな業態で出てきているが、フォン・アズ・ア・サービスを名乗るドイツのベンチャー企業であるeverphone(https://www.everphone.com/en/)が、1億7000万ドル(約190億円)の評価額で新規資金調達に成功したという。everphoneのウリはリファービッシュによるサーキュラーエコノミーの実現のようだ。
企業向けにスマホの調達から修理までを1ストップで提供
12月初め、スマートフォンのリースを行なうeverphoneが、シリーズCとして2億ドルの資金調達(デットファイナンスを含む)をするというニュースが出た。
everphoneは2016年創業。企業向けにスマートフォンをサービスとして提供するというモデルをとる。1ストップで端末の供給、サポート、修理、リサイクルを請け負うもので、企業が必要とするモバイルデバイス管理(MDM)なども設定済み。データ保護とセキュリティーなども任せることができる。ビジネスモデルはサブスク制で、価格は人数や機種により決定するが、月10ユーロ(約1300円)を切る価格設定も可能のようだ。
端末は、iPhone、Galaxy、Pixel、ノキア、そして部品取り替えができるサステナブルスマートフォンのFairephoneなどから選択できる。企業を従業員に渡す端末を決めるモデルのほか、従業員が選択できる「Choose your own device(CYOD)」モデルも提供する。
everphoneのサイトによると、顧客はすでに1000社を超えているとのこと。その中には世界的な会計事務所であるErnst&Youngなどの大企業から中小企業までさまざまだ。これらの顧客企業を通じて12万4000台のスマートフォンを提供しているという。2021年初めには3万8000台だったというので、1年足らずで3倍近く増えていることになる。スマートフォンから始まり、今ではタブレットやノートPCも手がけているようだ。
ポイントはサステナビリティー
端末を無駄にしないという点が顧客企業もアピール可能
企業はソフトウェアからインフラまで、さまざまな資産を自社で所有するモデルから使った分だけ払うモデルに移行させている。今やサーバーやPCにもaaSはあるので、スマートフォンにあってもおかしくない。
everphoneのメリットとして、企業のIT担当の手間を軽減し、コストを削減できるところにあるが、最大のアピールポイントはサステナビリティーだ。フォン・アズ・ア・サービスにより、企業はデバイス1台あたりのCO2の排出を60kg節約でき、原材料の95%をリサイクルできるとうたう。
実際、創業者兼CEOのJan Dzulko氏は自分のディスプレーが壊れた時に保証や修理の手間がかかったことが起業のアイデアにつながったと語るが、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を促進するという点が投資家への訴求につながっているようだ。
端末は一定期間(通常は2年間)経った後は、改修されて整備済品としてレンタルする。企業向けスマートフォンの寿命は通常3年以下だが、このことで5年に延ばすことができるという。
投資家はドイツベースのsignals Venture Capital、Cadence Growth Capitalなどに並んで、Deutsche Telekomも入っている。Deutsche Bankの融資も受けている。
今回の資金調達により、従業員を拡充して拡張を進める。すでに米国に拠点を持っているが、急ピッチで米国など欧州以外の市場の開拓を進める。
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