柳谷智宣のkintoneマスターへの道 第105回
「kintone AWARD 2021」レポート後編
グランプリは相互電業! 愛媛バス、サエラ、RGCのkintone AWARD 2021登壇
2021年12月24日 09時00分更新
kintoneを活用した細かい改善を積み重ねて新しい価値を生み出したRGC
最後に登壇したのはRGC 営業部3課課長 當眞大地氏で、プレゼンテーマは「混沌のるつぼから生み出し新しい価値」だ(関連記事:琉球ガラスの工芸会社だから作れた「仕事にフィットする」kintoneのシステム)。
RGCは琉球ガラス製品の製造、卸、直営店の運営に加え、沖縄県糸満市に琉球ガラス村という観光施設も運営している。県内では一番大きい琉球ガラスの工場で、工場にいる職人に現代の名工が3名、工芸士が12名もいるのが特徴だ。
kintone導入のきっかけは2年前、消費税が変更されたこと。當眞氏は前職のIT会社でkintoneの導入支援の仕事をしていたので、kintoneでできることには詳しい。そこで、kintoneとクラウドPOSレジサービス「スマレジ」を導入した。
以前と比べて、6分の1のコストで導入できたが、喜べたのは最初だけだった。いざ活用していこうとなったときに、課題に直面したのだ。商品と会社の情報が混沌状態になっていたのだ。しかも、コロナの影響を受け、売上が最大95%ダウン。辞める人もいた。當眞氏はkintoneで一発逆転ホームランを打ちますとは言ったものの、実現できず。考え方を変えて、ヒットとなる小さな業務改善を積み重ねていこうと決めた。
課題は3つ。リテラシーの不均衡、情報資産が埋没していること、情報が属人化しすぎていることだった。
「平均年齢47歳の職場で、リテラシーとか属人化といっても通じないので、私たちの言葉に置き換えます。「シークヮサー問題」「望さんが休み問題」「信用できない理論在庫」です」(當眞氏)
シークヮサーは沖縄県内でも書き方が統一されていない。横棒の数やワが小さい、アが小さいなどぶれているそう。実際に同社の製品にシークヮサーがあるわけではないが、同様に商品名の表記がぶれて、kintoneで集計できないという課題があったのだ。
そこで、商品名とバーコードを組み合わせて対応。バーコードで読取るのでぶれることはなくなったのだが、社内でなかなか使ってもらえなかった。ヒアリングしたところ、サブテーブルのフィールドが増えすぎて、右に大きくスクロールしないと追加できないという課題が発生していた。「そこでバーコード入力を入れたあと、Tabキーを何回か押して1を押してEnterを押すというようなショートカットを組み合わせたバーコードを作りました」(當眞氏)。これで、入力を大きく効率化でき、塵も積もって月間1200分の時間削減が実現した。
「望さんが休み問題」はその名の通り、社歴が長く、倉庫のどこに何があるのかをよく知っているスーパープレーヤーが休みを取ると業務が回らなくなるという、あるある課題だ。これは誰かが棚卸しをするごとに、棚の情報をkintoneに登録し、徐々に属人化を解消していくことで対応した。
「信用できない理論在庫」というのは、以前は工場で作った情報をPCに入力しないので、次の棚卸しまで在庫にカウントされないという課題。そのため、実際の在庫を確認するのに、内線が飛び交っていた。これは、Web APIを利用して、POSレジシステムとkintoneをつなぎ、自動化を行って対応したそう。APIの構築は、kintoneエバンジェリストの久米氏に相談したという。信頼できる在庫数が見られるので、確認の手間が軽減。内線の量は半分になったそう。
これら業務量を小さくする改善の積み重ねで、結果的に200%の業務効率アップを実現した。
「kintoneはかけあわせが強いです。POSシステムだったらスマレジとWeb APIで繋げるし、バーコードリーダーを繋げるとキーボードが苦手な人でも伝票が作れるようになります。よく脆く傷つきやすい心のことをガラスのハートと言いますが、ガラスメーカーからするとガラスは再利用が可能です。折れたり壊れたガラスは溶解して作り直せばOKと考えています。固定化された業務や余った情報を、熱量を加えたkintoneに入れれば、新しい価値を作ることができると思います」と當眞氏は締めた。
「kintone AWARD 2021」グランプリは、投票で相互電業が獲得
以上、6社による熱いプレゼンが終了。最後にグランプリの投票が行なわれた。「kintone AWARD 2021」のグランプリを獲得したのは、相互電業の今野愛菜氏となった。
「2年前、ここでkintone Awardを見て、私もkintoneを使ってみんなの業務改善をしながら幸せになれたらいいな、と思っていました。いろいろ大変なこともありましたが、こうして皆さんに共感してもらえたり、誰かの役に立てるのはすごくうれしいと思っています」(今野氏)
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