IT業界の巨人、IBMやHPなどの先例、国内電機はそれぞれの戦略を
大手企業の経営は大きな岐路に立っている。
東芝とときを同じくして、米GEが、航空、医療、電力の3社に再編することを発表した。ここ数年では、IBMやヒューレット・パッカードも同様に分社化している。
一方で、日本の大手電機では、今年に入ってから、ソニーが持ち株会社制へと経営体制をシフト。パナソニックも2022年4月の正式スタートを前に、2021年10月から持ち株会社制としてのバーチャル体制へと移行したところだ。
しかし、日立製作所は、デジタル化によってバランスシートが描けるものを連結対象に残し、総合力を発揮することを強みとした経営体質を維持しながら、成長戦略を描いている。
このように、各社がそれぞれに経営戦略が異なる状況が生まれているのだ。
では、東芝はなぜ、再編という道を選んだのだろうか。
東芝の畠澤副社長は、その理由を次のように語る。
「東芝にしかできないことを、責任を持って実行しつづけることが、東芝にとっての存在意義である。だが、お客様から求められる内容とスピード感が違うものが混在しているとピュアに経営判断、経営投資ができない。経営を取り巻く環境変化が激しいなかで、色がまじりあった状態での経営判断では追いつかない。ピュアな判断ができないと勝てない。それが、スピンオフの流れになっている背景にある。これによって、東芝にしかできないものを、お客様が求めているスピード感で応えていきたい。今回の戦略的再編は、ニーズに合致した判断であると考えている」
そして、綱川社長兼CEOもこんな風に語る。
「現在、半導体が不足している状況を考えると、300mmのパワー半導体の生産ラインへの投資は、少なくとも半年前には決断できたのではないかという反省がある。東芝には、半導体の分社会社があり、本社があり、経営会議があるという体制によって、俊敏な判断ができなかった。新たな体制では、それぞれの市場、競争原理、競争相手を鑑みた上で、専門分野にフォーカスした執行部が速い決断を下し、スピード勝負により、グローバルに勝ち抜くことを目指せる」とする。
東芝には、「総合電機の解体」という表現が当てはまりそうだが、綱川社長兼CEOは、「東芝には、テレビも、家電も、パソコンもなく、メディカルもない。総合電機メーカーという感覚はもはやない。今回の再編は、総合電機メーカーの『解体』ではなく、未来に向けた『進化』である」と否定する。
東芝の経営回復の遅れは顕著だが、今回の戦略的再編は、時代の変化に先駆けた英断となるのか。その答えができるのは少し先の話になる。
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