このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

業務を変えるkintoneユーザー事例 第126回

「絶対失敗しない、ではなく、絶対失敗したくない!」

突如任命された税理士法人のIT担当が、はじめてのkintoneで挑んだ業務改善

2021年11月25日 10時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

kintoneなら、品質を下げずに仕組みをシンプルにできる

 こうした取り組みを続けていくと、同社のkintoneの開発コンセプトも見えてきた。「それは、『品質は下げずに、仕組みはシンプルに』ということ。一般的に品質を下げないようにすると仕組みは複雑になる。しかしkintoneならシンプルにしながら品質は下げない、むしろ上げることができるということに気づいた」(嶋長氏)

 とはいえ、kintoneをはじめて使う段階のため、使いこなしのノウハウもわからない。そこで外部の力も借りることにした。ミッドランド税理士法人の小泉氏は、同業で先んじてkintoneを使いこなしている頼れる存在で、kintoneでわからないことは何でも教えてもらっているという。嶋長氏は「神様」と呼んでいるほどだ。

 小泉氏の力も借りて、次に作ったのが顧客への訪問管理のアプリだ。税理士と顧問先企業の間には、訪問頻度の取り決めがある。月1回、2カ月に1回など、契約によって訪問頻度が異なるため、顧客ごとに訪問予定と実績回数を管理する必要がある。「これも、従来はエクセルで管理しており、訪問予定と実績が別シートだったため、二重管理の状態だった。これを一元化するためにアプリ化した」(嶋長氏)

 新しく作ったアプリでは、月初にレコードとして訪問予定を一括して登録する。訪問が終われば、報告書は予定のレコードといっしょに提出する。これを、VBAとkintoneの組み合わせで処理し、月末の訪問実績の集計はほぼ自動で行うことができるようになった。

「従来の業務と見た目をあまり変えないようにしたことで、担当者の負担を減らし、スムーズに移行するこができた」(嶋長氏)

 このアプリの導入で、1ヵ月あたりの業務時間の削減は、担当者が20時間、総務部門は18時間、計38時間という大きな効果を挙げた。「訪問管理の業務は100%自動化し、しなくてよくなった」(嶋長氏)

 このアプリは、構想から実行まで3ヵ月ほどをかけてじっくり作り込んだアプリだったため、嶋長氏は、リリース後に職員からかなりの好反応が来ることを期待していた。しかし、実際には何も反応がなく、少しがっかりした。「しかしこれは、違和感なく業務が進んでいることの表れで、むしろ大成功だったと思うことにした」

 ここから、徐々にアプリの導入範囲を広げていった。決算や営業の管理、各種届け出や職員マスターの管理など、事務所内部の業務にも拡大している。

 嶋長氏は、kintone導入によって変わったことが3つあるという。1つは漠然とした不安からの解放だ。「業務の繁忙期になると職員は気持ちが重くなるが、いつ、どれぐらいの仕事があるかあらかじめわかれば、不安はかなり軽減する。紙の時代はそれが見えなかったが、kintoneの導入で、業務の山が見えるようになった」

 2つめは業務の標準化だ。今までは基幹システムやエクセルに分散していたシステムのデータを、誰かがまとめて、社内に配信していた。いわば人間マスター的な人が存在していた。この属人化の状態を、kintoneによって一元管理して可視化することができた。

今までは誰かがまとめていた

 そして3つめは、期日管理がシンプルになったことだ。やはり、これまでは誰かが管理していた期日の情報をkintoneのアプリに予定を入れることで、自動的に担当者に通知されるようになった。

社内外の仲間を増やして、業務改善の輪を広げたい

 kintoneの展開で重要なのは、社内の仲間作りだと嶋長氏は話す。現在は社内の開発メンバーは嶋長氏を含め2名だが、ほかにサポートメンバーとして8名を指名している。社内掲示板で配布しているアプリのマニュアルを見てもわからない場合は、サポートメンバーに聞いてもらい、それでもわからなければ開発メンバーが対応する。アプリを作る際も、まずサポートメンバーに共有し、意見を聞いて改善してからリリースしている。

 今後の展開は、日報、勤怠管理や請求の管理などを考えている。またFormBridgeを用いたグループ会社を含めた情報共有の仕組みも計画している。

 嶋長氏は最後に、「業務改善のカギは仲間作り。社内、社外がいっしょにチームとなっていけば失敗はしないと思う。これからは当社の顧客企業にも、中小企業の困りごとを解決するツールとして、kintoneを勧めていきたい」と語った。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事